1881年にフィンランドで創業され、アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、カイ・フランクら北欧デザインを代表する人物が多数関わってきたデザイン企業のイッタラ。アイコニックなガラス製品や食器は北欧デザインの代名詞となり、タイムレスな魅力を発信してきた。
日本にも多くのファンを持つイッタラがこのたびロゴや方向性を大幅にリニューアルすることがわかった。
まずはロゴ。これまでもその時々の時代背景やブランドの状況、デザインの方向性や文化的な影響などを反映したロゴを発表してきたイッタラだが、今回のロゴデザインには、グラフィックデザイナー アレクシ・タンミ(Aleksi Tammi)が抜擢された。タンミはザ・ウィークエンド、グライムスといった尖端的なイメージで知られるミュージシャンや、ナイキやアディダスの仕事も行う気鋭のデザイナー。イッタラのロゴ発表に際して、タイポグラファーのヨーラン・セーデルストロム(Göran Söderström)とともに「Aino」というフォントも制作した。
そしてクリエイティブ・ディレクターに就任したのは、フィンランド出身のヤンニ・ヴェプサライネン(Janni Vepsäläinen)。JW アンダーソン、ジバンシィ、アレキサンダー・マックイーン、シモーネ・ロシャ、ザ・ロウなどのファッションブランドで経験を積み、JW アンダーソンではシニア・ニットウェア・デザイナーを務めた。ミュージシャンのハリー・スタイルが着用したことで一躍話題となり、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に所蔵されたJW アンダーソンのカーディガンもヴェプサライネンがデザインしたものだ。
今回の就任にあたって以下のようなコメントを発表している。
イッタラはとてもユニークな存在で、クリエイティブな世界観を持っていると思っています。新しいものを創り出し、文化に貢献し、お客様がその世界を体験できるようあらゆる接点を通じて働きかけています。アーティストやブランドとのコラボレーションもそのひとつですし、ブランドが手がけるイベントや展覧会など、さまざまなチャネルを介してイッタラのデザインが接点となってクリエイティブな世界を提供しています。私は、今までのイッタラでは想像もしなかったような体験を提供していきたいと思っています。そして革新的で大胆なデザインブランドというアイデンティティを強固なものにしていければと思っています。イッタラの核心ともいえるのは、1881 年の創業以来情熱あふれる職人たちによって生み出されてきたガラスアイテムです。クラフトマンシップや革新性、アーティスティックなコラボレーションといった取り組みによってイッタラは新たな一歩を踏み出します。この新しいクリエイティブな世界をご覧いただけることを楽しみにしております。
新しいクリエイティブ・ディレクションのもとでデザインされた最初のコレクション、Iittala PLAY(イッタラ プレイ)は2024年3月に登場予定。カラフルで遊び心があり、幅広い用途があり、都会の暮らしに合い、日常の暮らしの大切な一部となるようにデザインされるという。また環境への配慮として、イッタラのアイコンでもあったロゴシールは廃止される。
今後はアーティストとのコラボレーションを積極的に進め、イッタラのガラスアイテムを通じて芸術性を表現できるような取り組みも。その一歩として、実験的なサウンド&ビジュアルアーティストとしてロンドンで活動するダムセル・エリシウム(Damsel Elysium)とのコラボレーションでユニークなガラスの楽器やオブジェが発表される。
洗練されたデザインと親しみやすいイメージで根強いファンを持つ北欧デザイン。今回のイッタラの変革はSNSで話題となり賛否両論を巻き起こしているが、北欧デザイン界にどのようなインパクトをもたらしていくか楽しみだ。