公開日:2023年1月31日

あちらもこちらも【おじさん】でいっぱい! 「広重おじさん図譜」(太田記念美術館)の会場風景をレポート。歌川広重にいつもと違った見方を発見できる展覧会

太田記念美術館で2023年2月3日から3月26日まで

歌川広重 「東海道五十三次之内 鞠子」(前期)

浮世絵の世界であなたの「推しおじ」を探せ!

風景画の名作を数多く描いた絵師・歌川広重。その絵をよく見ると、なんとも味わい深い人物たちがたびたび登場することに気づく。それらの人々を親しみと愛着を込めて、あえて「おじさん」と呼んでしまうのが太田記念美術館で開催される「広重おじさん図譜」だ。会期は2023年2月3日から3月26日

歌川広重 「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」(後期)
歌川広重 「即興かげぼし尽し うさぎ/即興かげぼしつくし 鉢植の福寿草」(前期)

広重の浮世絵をじっと見てみる。無垢な笑顔のおじさん。仕事をがんばるおじさん。グルメを楽しむおじさん。ピンチであわてるおじさん。かれらは見れば見るほど個性豊かで、愛嬌に満ちた存在であることがわかる。江戸時代を舞台とすることの多い落語でも、すっとんきょうでおっちょこちょいなおじさんが幾人も登場するが、かれらを通して感じられる昔々の空気感はどこか心地よいものだ。

歌川広重 「木曽海道六拾九次之内 拾九 軽井沢」(前期)
葛飾北斎 『北斎漫画』十編(前期)

よく知られた広重の名品も、「おじさん」という視点で眺めることで、今までとは違った新鮮なイメージをもたらすかもしれない。

会場風景より 撮影:編集部
会場風景より。学芸員の渡邉晃が「本展でいちばんハードボイルドな渋いおじさん」と称する人物が登場する《東海道 三十 五十三次 はま松》 撮影:編集部
会場風景より。「あわてるおじさん」として紹介される《東海道五拾三次之内 御油 旅人留女》の部分。旅籠屋の客引きである留女(とめおんな)に強引に連れ込まれそうになってピンチの様子 撮影:編集部
会場風景より、《狂戯芸つくし 三》。江戸のおじさんは宴会芸にも本気だ。「くだらない芸を一生懸命やっている、真剣かつドヤ顔のおじさんが見られる」(渡邉) 撮影:編集部

展示担当学芸員の渡邉晃は、「広重は群衆を描いたとしても、ひとりとして同じ顔の人がいない。しかも骨格から違うというか、頭蓋骨の形から違うと感じる」と、その優れたデッサン力を説明。

会場風景より。展示担当学芸員の渡邉晃 
展示風景より。たくさんのおじさんが登場する《東海道 五十三次 日本橋》。人物の描き分けにも注目だ 撮影:編集部

「北斎が風景のなかに人物を描く場合は、主体として前景にくる。いっぽう広重は、人物が描かれていても風景画のようにも見える。風景画と人物画をブレンドするようなバランス感覚が優れている」とも語った。

展覧会には、保永堂版「東海道五拾三次之内」を始めとした代表作はもちろん、葛飾北斎や小林清親らの名品、そして普段は展示されることの少ないレアな作品まで並ぶので、見比べるのも楽しい。ぜひ、あなたの「推しおじ」を見つけてほしい。

会場風景より。葛飾北斎ら、同時代の絵師の作品も並ぶ 撮影:編集部
小林清親 「三十二相追加百面相 おしろい他」(後期)

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