ローカルだけど国境を越えた協働プロジェクト
東京・中央線沿いの武蔵小金井駅から徒歩5分ほどにあるアートスポット シャトー2Fを運営するNPO法人アートフルアクションは、展示だけでなくアーティストと市民が協働するさまざまなアートプロジェクトを展開している。例えば、小金井市55周年行事の一環ではアーティストの淺井裕介氏と多くの参加者が小金井市内各所の公共スペースに大きな地上絵を制作した。
今回は、ポーランド人作家6人と共に作品を制作した展示「ハイブラッド・プレッシャー」展に注目する。子供から大人まで、職業も年齢もさまざまな人が各作家のプロジェクトに参加している。スカイプやビデオレターでポーランドと日本を繋ぎ、作品制作は進められた。
ポーランドの現代アートシーン
ポーランドは、第二次世界大戦中は国が分断されていたが、戦後独立、ソ連下の最大で最も重要な衛星国となった。ソ連崩壊後の1989年には民主化されるが、不安定な社会情勢が続いた。2004年にはEUの加盟国となっている…というのは非常に簡略化した世界史の表層レベルの話ではあるが、そのような環境でポーランドのアートも激変する社会に大きく翻弄されてきた。アートマーケットという視点でいえば、アートギャラリーが増え、ようやくマーケットが成長してきたのは、つい最近であると言われている。一方で、既成概念に捉われない若いギャラリーも多く、首都のワルシャワを中心に各都市でヨーロッパの他国との交流やアートイベントも活発だ*。現在活躍している作家の中には、社会主義から資本主義という大きな社会の変化を経験した者も多い。そんな彼らにとってアートと政治は強く結びついており、社会に存在するさまざまなタブーに積極的に挑む作品が多いのが特徴ともいえる。
社会に対する「直接行動」
今回の展示ポスターの真ん中にある大きな赤い「?」とその裏に見え隠れする「!」の影を見て何が思い出されるだろうか。そう、ハイレッド・センターのシンボルとなっている「!」だ。
展示のキュレーターであるKarol Kaczorowski(カロル・カチョロフスキ)は日本のハイレッド・センターに共感したと話す。アートと政治のつながりを強く意識するポーランド作家たちには、「直接行動」を掲げてパブリックな場でパフォーマンスを展開したハイレッド・センターの活動に通じるものがある。期間中に展示されるものはワークショップを経て出来上がった完成品となる。しかし、注目どころは、それぞれの作品に使われた材料・制作方法・制作手順、そしてワークショップ参加者である制作者たちの行為からみえてくる今日の社会の姿の一面である。アート作品をつくることが、社会に対する「行動」の第一歩となっている。制作に使われたマニキュアやパフォーマンスに使われたひまわりの種は、どのような意図を持つのか、参加者がワークショップ中に交わした言葉、感じたこと、考えたことを想像しながら、自分だったら何を考えるだろうか、何をするだろうかという事も考えたい。社会は私たち一人ひとりがつくりあげていくものだということを忘れてしまいがちな今日この頃にぴったりだ。
*参考:ワルシャワのアートギャラリーウィークの紹介記事(英語)
Warsaw’s Daring Young Art Scene Is Forging Its Own Path – ARTSY EDITORIAL
■展示概要
「Hi-Blood Pressure展 −人が何かに熱中するとき、血圧は上がる−」
参加作家:Mateusz Chorobski(マテウシュ・ホルプスキ)、Martyna Scibior(マルティナ・シチビョル)、Anna Orlowska(アンナ・オルヲフスカ)、Dominika Olszowy(ドミニカ・オルショヴィ)、Kuba Dabrowski(クバ・ドンブロフスキ)、Anna Jochymek(アンナ・ヨヒメック)
キュレーション:Karol Kaczorowski(カロル・カチョロフスキ)
会期:2017年7月1日(土)~7月17日(月)
時間:平日 12:00~18:00、土曜日・日曜日・祝日 12:00~20:00 会期中無休
会場:小金井アートスポットシャトー2F、地下1F
〒184-0004 東京都小金井市本町6−5−3 シャトー小金井
TEL:050-3627-9531
http://artfullaction.net/
企画:NPO法人アートフル・アクション
詳しくは:https://www.facebook.com/hibloodpressure.koganei/
*関連イベント
7月9日(日)14:00〜:公開ミーティング
ワークショップ参加者、アーティスト、さらにゲストを招いた公開ミーティング