男性同士の恋愛を扱ったフィクションジャンルの一つ、ボーイズラブ(BL)。小説やマンガを起点に、現在は国内外のドラマでも積極的に扱われるこの文化動向をテーマにした展覧会「はじめてのBL展」が、角川武蔵野ミュージアムで開催される。監修協力は藤本由香里、佐川俊彦、西原麻里、堀あきこ、三崎尚人。会期は5月20日~7月16日。
BLの歴史はおよそ半世紀に及ぶ。1960年代に森茉莉が女性作家としては日本で初めて男性同士の性愛を書き、70年代に入ってからは竹宮惠子など少女マンガ家が少年同士の恋愛、いわゆる「少年愛」作品を描き始めた。その後、1978年に初めての専門誌『JUNE』が創刊。作品の掲載だけでなく、作家の育成も行なった同誌はその後のBL文化の発展に大きく貢献した。
また、BLの誕生と展開には同人誌の存在も欠かせない。「やまなし、おちなし、いみなし」を意味する「やおい」(今展では、「やおい」を二次創作系同人BLと定義)はとくに80年代後半からの二次創作ブームを象徴する概念・用語として親しまれ、2人のキャラクターの恋愛関係を攻め×受けで示す「カップリング」表記の発生などとともに、社会現象的な広まりを見せた。
それらの事象を経て、1990年代前半からBLマンガ雑誌、BL小説誌の創刊が相次ぐ。今年で創刊30周年を迎える雑誌『MAGAZINE BE×BOY』などの登場や、あさぎり夕ら、BLと同時にBLではない作品でも活躍する作家の存在も顕著になり、BL文化はますます大きく花開いていく。現在「BL」は世界中に広がり、多彩な作品、多くのイベントが海外からも発信されている。
展覧会では、『JUNE』を起点に、専門ジャンルとしてのBLの変遷を大きく3つの時代に分けて、各時代のエポックメイキングとなる作品やムーブメントを、原画や書籍、雑誌、映像、年表などとともに紹介。竹宮惠子、あさぎり夕、紗久楽さわなどの原画を精巧に複製した「原画’(ダッシュ)」や原画の展示に加え、中島梓(栗本薫)の小説の直筆原稿、すでに休刊となったBL雑誌など貴重な展示物を見ることができる。また、会場内一部エリアでは、声優の森川智之がナレーションを担当するとのこと。