2022年11月1日に「愛・地球博記念公園」内に開園予定のジブリパーク。公園の地形をそのまま生かし、スタジオジブリの世界が表現されている。
そんなジブリパークをひと足先に楽しむことができる「ジブリパークとジブリ展」が、長野県立美術館にて開催中だ。期間は7月16日~10月10日。
7月15日に行われたプレス内覧会には、ジブリパークの監督を務める宮崎吾朗が登場。
宮崎はこれまで、「三鷹の森ジブリ美術館」や愛知万博のパビリオンである「サツキとメイの家」等の建築物を手がけてきた。またアニメーション監督として、『ゲド戦記』『コクリコ坂から』『アーヤと魔女』などの作品を生み出している。
現在、愛知県長久手市に開園予定のジブリパークの監督として、制作全体の指揮と監修にあたっている宮崎にとって、長野県は大学時代を過ごしたゆかりある地。ここ長野県立美術館で語られた宮崎の言葉とともに、本展の見どころを紹介する。
ジブリパークの制作現場を指揮する宮崎の、これまでの仕事と作品を振り返るとともに、11月に向け開園準備が進むジブリパークがどのようにつくられているのか、数々の貴重な制作資料とともに伝える本展。
第1章「はじまりは三鷹の森ジブリ美術館」、第2章「アニメーションの世界をつくる」、第3章「アニメーションの世界を本物に」、第4章「ジブリパークのつくりかた」の4つの章で構成。第2章では、2021年6月〜2022年5月まで三鷹の森ジブリ美術館で開催された企画展示「アーヤと魔女展」も再現されており、見応えたっぷりの内容となっている。
入口をくぐるとまず目を引くのが、『となりのトトロ』でおなじみの大きな「ネコバス」。子供も大人も自由に乗り込むことができ、訪れた人は瞬く間にジブリの世界へと引き込まれる。序盤から、目で見て手で触れ、五感を使った体験ができる仕掛け。「今回の展示は僕がやってきた仕事がわりと中心になっているので、少し恥ずかしいようなところもあるんですけど」と前置きしたうえで、宮崎は開催にあたっての思いを述べた。
「僕自身のことでいうと、ジブリ美術館っていうハードをつくるところからジブリに入り、映画のような虚構の世界にいって、いままたパークに戻ってきた。やっとまた自分は、現実の世界に戻ってきているんだなっていうのを、ちょっと感慨深く思ったりしています」
宮崎は信州大学農学部を卒業後、建設コンサルタントとして公園緑地や都市緑化の計画・設計に従事。その後スタジオジブリに関わるきっかけとなったのが、総合デザインを手がけ、初代館長も務めた「三鷹の森ジブリ美術館」だった。
第1章では、宮崎の父・駿の着想からはじまったジブリ美術館が、歩いて触って楽しめる本物の空間へとどのように変遷を遂げたのか、その軌跡をたどることができる。
「つくるだけでなく、その後どう管理していくのかというところまで携わってみたいという気持ちが、当時は強かったんです。そういう意味では、ジブリ美術館では全部やれて面白かったし、全部やっちゃうと大変なんだと思った。そこでの経験は、その後の映画づくりに意外に生きてきたっていうのはありますね」
スタジオジブリ初のフル3DCGアニメーションの制作過程を紹介した「アーヤと魔女展」が、本展で特別に再現されている。宮崎が企画と監修を担当し、自ら解説も手がけた。「すごく面白い展示になっているので、ぜひ見ていただきたい」と力を込める。
「コンピュータでアニメーションをつくっているというと、ひどく手仕事から遠いやり方をしているんじゃないかと思われがちなんですよね。勝手にコンピュータがキャラクターを動かしているんじゃないかとか、コンピュータがつくってくれるんじゃないかというイメージがあるんですけど、全然そんなことはなくて。
もうコンピュータというツールを使った手仕事だという言い方ができると思うんですよ。ツールがデジタルに変わっただけで、やっていることは手書きのアニメーションと変わらないんだっていう自分の感想を、かたちとして残しておきたかったので、このような展示にしました」
宮崎はジブリの世界をどのように描き、考え、つくっているのか。第4章ではジブリパークの貴重な制作資料や試作品の展示を通し、ジブリパークの内部へと迫る。
「30年以上、宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫らが、たくさんの映画をつくってきたわけですよね。彼らが亡くなったあと、まだ生きていますけど、それらの作品が消えていってしまうっていうことが、とても残念だなと思ってまして。
消えていかないように、みんなに忘れられないようにするための場所みたいなものがほしいと思っていて、それがジブリパークに結びついている。
だからスタジオジブリの映画を観た方に訪れていただきたいっていうのは、もちろんなんですけど、逆にジブリパークを訪れて、それがまたジブリ映画を観るってことにつながっていってくれると嬉しいなという思いでつくっています」
「ジブリパークとジブリ展」は、10月10日まで長野県立美術館にて開催されたのち、愛知、熊本、兵庫、山口と全国5会場を巡回する。
スタジオジブリ作品の中核を担ってきた宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫らの仕事を間近で見てきた宮崎の歩みや思考の一端に触れることができる本展。「今回の展示の100倍や1000倍くらいのものが、ジブリパークに詰まっているんだっていうふうに思っていただいていいと思う」と宮崎が語るジブリパークに足を運ぶ前に、ぜひ訪れていただきたい場所だ。
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