ニューヨークを拠点に活動している彫刻家アリソン・ショッツの個展が、エスパス ルイ・ヴィトン東京にて12月25日まで開催されています。日本で正式に紹介するのは本展が初めて。ショッツの作品は、グッゲンハイム美術館、ハーシュホーン博物館と彫刻の庭、サンフランシスコ近代美術館、ホイットニー美術館などいずれもアメリカを代表する美術館に所蔵されていて、ロンドン、ストックホルムなどの海外でも紹介されています。
ルイ・ヴィトン表参道の7階にあるこのスペースは、全面ガラス張りという、アートスペースとしては珍しい開放的な空間構成で、東京の街並みが見下ろせるロケーション。ショッツはその自然光あふれる空間を活かしたインスタレーションを展開しています。
スペースに入るとまず眼に飛び込むのは、展覧会のタイトルにもなっている《Geometry of Light》。透明なアクリル板のフレネルレンズを数珠つなぎにして、ギャラリーいっぱいに広げています。そこに四方から飛び込む光や風景が反射し、様々な様相を呈します。作品は静的ですが、見る位置や時間帯によって、見え方は動的に変化します。屈折、反射、ホログラフィといった光の原理や性質を私たちの前に顕にしてくれます。
もちろんそれは自然が人工物に勝るという単純な話ではありません。自然物を考察することで、私たち人間の創造の根源にあるものまたその限界を探ろう、それにより私たち自身のあり方を描こうとしているという野心的な試みのようです。
ショッツは「宇宙は何から成るのかという質問は、彫刻やアートが何であるかということの基本であるように思えるのです」とコメントしています。その発言からは、世界が存在する秩序としての物理学を意識しているように読み取れます。それはヴァレリーの貝殻の考察が物語っている、余白としての自然を喚起させる発言です。アクリルやピアノ線などの工業製品を用いながら、光や時間を見せるショッツ。私たちは、人工物の向こうにある自然に触れる時に何を見、何を感じることができるのでしょうか?宇宙という秩序をどうやって感じることができるのか。ショッツの試みはアートという人間の営みによって感じることのできる自然を通して、私たち自身を映し出す鏡を出現させることかもしれません。
yumisong
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