作品はペイントが中心だったが、立体やパフォーマンスなど、さまざまなメディア作品がうまく混在している。別に設けられた2つのステージではトークショーやタレントのステージ、そして今回のGEISAIの審査結果などが発表される。
いわゆる展覧会的なアートイベントを期待していた来場者はたぶん驚いたことだろう。なにしろブースの中では自己の作品をつくりつづけるアーティストもいれば、通りすぎる人を引き止めるでもなくひざをかかえて本を読んでいる人、中古のお宝レコードを探すように段ボールにつまった作品を夢中で選んでいる人、などなどがいるのだから。
GEISAIの興味深い点は、いろいろなアートとの関わり方を許容し、提供することで、出展者にも来場者にもその先を模索させる、という点だ。まるでマーケットのように作品をみせて売り買いしたり、卒業制作展のように、ポートフォリオと名刺を置いて作品を説明する人もいれば、ひたすら自らのパフォーマンスに没頭している人もいる。来場者もブースの間を回遊しながら、気に入った作品の前で立ち止まってアーティストと会話を交わしたり、作家の販売作品を楽しそうに選んだりしている。
まだ大学生というある作家は、前回は写真でGEISAIに出展したが今回はイラストレーションで出展。スカウト審査員のひとつから賞を受賞した。「前回はなんだか自分らしくなかった。今回イラストレーションで出展して、なんとなくつかめたような気がします。GEISAIは出展料がリーズナブル。だから学生の私でも出せるんです。」とGEISAIのコスト面からの利便性を語る。
ある男性の作家は「賞をねらっていたんですけど、ダメでした。」とちょっとがっかりした様子。「ずっと前からGEISAIのことは知っていました。今回で一区切りということを知って、後悔したくなかったのではじめて出展しました。今後のビジネスへのつながりですか?どうでしょうかね。いまのところ全然声をかけられないし。(笑)」と少々落胆気味。
京都から来た生花を使ったアレンジを発表するヘアアーティストは「GEISAIに出ることで、多くの人に私の活動を知ってもらって、幅を広げていきたいと思って」とGEISAIのもたらす出会いの場を新たなコミュニケーションの機会に期待をよせているようだ。
出展するアーティストからすれば、アーティストとしてのデビューのチャンスやビジネスチャンスが当然の目的であろうが、日常にアートが浸透しなければ、作品の受け皿が拡大することもない。またアートを見る側も、アートと関わることに対してもっと気軽に楽しめる環境を求めているのではないだろうか。
もちろんここからはいくつかの日本のアートシーンが抱えている問題もみてとれる。例えばGEISAIのオリジナルワードである日本の美大の芸術祭や卒業制作展は、世界のアートシーンをどうみているのか。アーティストの価値はスターのようにセレブリティになることなのだろうか。アーティストはお金儲けしてはいけないのか。などなど。けれども私はそうやって眉間にしわをよせて考えてしまうことより、もっとアートを楽しむにはどうしたらいいか、こんなアートの楽しみ方ができれば自分の日常が楽しくなる、というように、自分とアートとのスタンスを考えていくほうが、ずっと発展的なように思う。そういう意味でもGEISAIが提供している場は、日本のアートシーンにおいて、とても重要な役割を担っていることは間違いないだろう。
Chihiro Murakami
Chihiro Murakami