目抜き通りの百貨店を中心に、戦前から東京の中心街として栄えてきた銀座。かたや東京駅という交通の要を中心に、日本の代表的なオフィス街として知られる丸の内。隣接するこの2エリアを中心にギャラリーや美術館を紹介します。新橋駅周辺から出発し、銀座エリアを通り、丸の内エリアへ抜けるルートで巡っていきましょう。
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「資生堂ギャラリー」は銀座七丁目交差点に面した資生堂銀座ビル内にあります。1919年に銀座の資生堂化粧品部に「陳列場」としてオープンした同ギャラリーは現存する日本で最古の画廊といわれています。第二次大戦中には一時閉鎖していた同ギャラリーですが、活動の再開にあたり誕生したグループ展「椿会」は現在まで続いており、最新の第八次椿会では杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]が参加しています。
銀座地区では最大級の広さをほこる展示空間は天井高5m超。展示ごとにガラッと変わる雰囲気で毎度フレッシュに楽しめるはずです。
資生堂ギャラリーからワンブロックの距離にあるのは「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」。国内では珍しいグラフィックデザインを専門とする同ギャラリーは、大日本印刷株式会社によって1986年に設立。頭文字をとって「スリー・ジー(ggg)」の愛称で親しまれています。近年は葛西薫や石岡瑛子の個展や、グラフィックデザインの国際賞「東京TDC賞2021」受賞作品の展示が開催されてきました。
ポスターやブックデザイン、パッケージなど、生活の中に散りばめられているグラフィックデザイン。だからこそしっかりと見つめる機会はなかなかないはず。作品として展示されることで、日常に潜むデザインの面白さやありがたみに気づくかもしれません。
ガラスブロックが目を引く銀座メゾンエルメス。8階に上がるとアートギャラリー「フォーラム」に入れます。建物が竣工した2001年以来、国際的に活躍する作家の個展を中心に展覧会を企画しています。
写真は2021年「ル・パルクの色 遊びと企て」展の様子です。ル・パルクの巨大な幾何学作品も2フロアにまたがる吹き抜けの空間では伸び伸びとした印象を受け、作品の色彩が映った格子状のガラスブロックはまるでモザイク画のようでした。
ギャラリーのほかに、10階には予約制のミニシアター「ル・ステュディオ」もあります。
Akio Nagasawa Gallery Ginzaは東銀座駅すぐのビル内にあります。長澤章生が主宰する同アートギャラリーは2014年にオープン。森山大道、須田一政、沢渡朔、細江英公、猪瀬光、野村佐紀子、宮島達男、安藤忠雄、ウィリアム・クライン、サラ・ムーン、らの作品を扱っています。銀座のスペースは著名な作家が中心ないっぽうで、青山にあるAkio Nagasawa Gallery Aoyamaでは若手作家を中心に紹介しています。
有名ブランドが集う銀座2丁目交差点に位置するシャネル銀座。2004年のビルの竣工とともにオープンしたのが「シャネル・ネクサス・ホール」です。近年はギイ・ブルダンなどKYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)に出展する作家の展覧会などを企画しています。同スペースは展示のみならず、コンサートホールとしても活用されており、美術と音楽、どちらのフィールドでも若手作家のキャリアを後押しする場として機能しています。
銀座1丁目交差点近くにあるポーラ銀座ビル。その3階にあるのが「ポーラ ミュージアム アネックス」です。ビル全体として「美容」「美術」「美食」という3つの美をコンセプトに掲げており、ミュージアムという呼称ながら、無料で観覧できます。主にポーラ財団が支援する若手作家の個展が開催されるほか、財団の豊かなコレクション展も継続的に企画されています。
最新の化粧品のお買い求めとともに、アートで美意識も磨いてみてはいかがでしょうか。
ポーラ ミュージアム アネックスの裏にあるのは「ギャラリー小柳」。現代美術のギャラリーとしてオープンしたのは1995年ですが、その歴史は古く、もともとは19世紀創業の勧工場でした。現在は杉本博司、ソフィ・カル、マルレーネ・デュマス、クリスチャン・マークレー、ミヒャエル・ボレマンス、マーク・マンダース、トーマス・ルフ、須田悦弘、束芋など国内外の現代美術作家と協働するプライマリーギャラリーです。
ギャラリーでの展示作品について、代表の小柳敦子さんは「現代アートを取り扱いつつも、時代に左右されない表現の普遍性を大事にしています」と語ってくれました。
銀座通りから少し離れて、有楽町方面へ進んでみましょう。「CADAN有楽町」は国内47軒のコンテンポラリーアートギャラリーが加盟する非営利の業界団体CADANが運営するスペースです。講演会や展覧会といったパブリックイベントや会員向けの勉強会を開催してきたCADANの展示スペースが2020年ついにオープン。加盟ギャラリーによって個展やグループ展が企画されています。
ギャラリーが多数所属していることで、展示替えの休館がほとんどない本スペース。有楽町近辺に来た際にはぜひ足を運んでみましょう。
今度は東京駅と皇居にはさまれた丸の内エリアへ。赤レンガ造りが印象的な建物は「三菱一号館美術館」です。1894年に創建された三菱一号館を復元した同美術館は2010年にオープン。企画展は主に19世紀後半から20世紀前半の近代美術を主題としており、収蔵品にはアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、オディロン・ルドン、フェリックス・ヴァロットンなどの作品があります。
館内には丸の内の歴史を体感できる「歴史資料室」あるなど、地域とのつながりを感じる同館。美術鑑賞とともに近辺の散策もおすすめです。
三菱一号館美術館のワンブロック先、東京駅目の前のKITTE丸の内の中にあるのが「インターメディアテク」です。2013年から、日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が協働で運営する本館。東京大学が開学以来蓄積してきた貴重な学術標本が展示されています。
館長で同大学教授の西野嘉章さんは、HPにて「現代のミュージアムは、コレクションから新しい知見や表現を導き出し提示する場所でもなくてはなりません。インターメディアテクは、それを多様な表現メディアの対話を通じて試みる実験のアリーナです」と述べています。たんなる標本展示に留まらず、研究を通じて新たな価値をもたらそうとする同館に、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
東京ステーションギャラリーは東京駅構内、丸の内北口改札を出てすぐに位置する美術館。構造の一部は1914年の丸の内駅舎創建当時のままです。東京駅の歴史を体感できる同館では、「近代美術の再発見」「鉄道・建築・デザイン」「現代アートへの誘い」という3つの柱を指針に企画された展覧会が、年4、5本開催されています。利便性抜群の同館。電車の待ち時間やショッピングの合間など、東京駅を訪れる際は要チェックです。
老舗画廊が残りつつも、新たなビルにアートスペースが入るなど新旧が共存するこのエリア。敷居が高く思えるかもしれませんが、練り歩いてみればきっと気に入る作品が見つかるはずです。東京の中心地銀座・丸の内で、ぜひアート鑑賞を楽しんでみましょう。