《夕凪の街 桜の国》カバー、2004年 ©こうの史代/コアミックス
マンガ家・こうの史代の全貌に迫る初の大規模原画展「漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり」が、石川の金沢21世紀美術館 市民ギャラリーBで開催される。会期は5月2日から5月25日まで。
1968年に広島市で生まれ、1995年に『街角花だより』の連載でマンガ家デビューしたこうの史代。原爆の被害とその後に続く日々を描いた『夕凪の街 桜の国』を2003年から連載し、第9回手塚治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した。広島の軍都・呉の戦災を描いた『この世界の片隅に』は第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、片渕須直監督によるアニメーション映画もロングランヒットを記録した。
こうのの過去最大規模の展覧会となる本展では、500枚以上のマンガ原画を展示。膨大な挿絵原画、絵本原画、作品のコンテや脚本、ブログ「こうのの日々」に登場するスケッチブック、制作風景を記録した初公開の映像などとあわせて、画業のすべてがわかる展覧会になるという。展覧会の監修は、小説家の福永信が務める。
『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』の原画展はこれまで数多く開催されてきたが、デビューから現在までを網羅した大規模な回顧展は、本展が初めてだという。こうのは初期からアシスタントを起用せず、原稿をすべて自身で描いており、着彩も本人が行っている。原画からは、こうの自身が描いた「1枚の絵」として線の魅力や色彩の力を感じることができる。
原画は連載作品は1話単位、短編は全ページを基本に展示。こうのが構成したストーリーを読みながら鑑賞できる構成となっている。また展示作品には、貴重なデビュー前の原稿や、高校生の頃に制作したマンガの原画も含まれるほか、「あとがき」として、こうのが美術館を訪れ、金沢を歩いて感じたことを描いた描き下ろし作品も公開される。
関連イベントとして、5月2日にはこうののトークイベントやライブペインティングを実施。さらに展覧会会場内には、こうのにファンレターを書くコーナーが設けられるという。
2025年でマンガ家生活30周年を迎える作家の道のりを、その原点からたどることのできる貴重な機会となりそうだ。