アート好きの女性が、カメラを持って東京の3つのエリアをTAB取材チームと歩きます! 散歩のお供は、ニコンが10月20日に、全世界一斉発売する “新世代プレミアムカメラ”「Nikon 1 J1」。レンズ交換ができるコンパクトなデジタルカメラです。
2回目は、キュレーター、クリエイティブディレクターの池田史子さんと恵比寿を歩きます。この街に、ギャラリーショップとスペースデザインのオフィス「gift_lab」をもつ池田さんにとっては、「日常」であるホームタウン。今日はNikon 1 J1が、いつもの恵比寿から池田さんを連れ出すべく、アート散歩に繰り出しました。
近年、この街に拠点を構えるクリエーターたちが増えているのをご存知でしょうか? 恵比寿在住在勤のクリエーターがゆるやかに連携するプラットフォーム「START EBISU」は、このエリアに新しいアートネットワークをつくっています。定期的に研究会を開いたり、先日は恵比寿ガーデンプレイス開催された「恵比寿文化祭2011」のアート企画のプロデュースといったイベント企画も行ったりと、この街の人々やスポットをつなぐ活動を行っています。また、域内にある30ヶ所以上の美術館やギャラリー、アートスポットをつなぎ、毎月、第一土曜の夜に交流サロンを開催する「1SS」などの動きも活発化しています。今日はこの街のこうした動きにまつわるエピソードも伺いながら歩きました。
それでは、池田史子さんへ筆をお渡ししましょう!
※ 本企画はギャラリー、ショップのご協力を得て、撮影を実施しています
池田史子さんが恵比寿の風景にシャッターをきる。
2011年9月26日 恵比寿
スタートは恵比寿ガーデンプレイス。
ここがメイン会場となった、去る10月8~10日に開催された「恵比寿文化祭2011」に参加したばかり。
恵比寿エリアのヒト、モノ、コトをつなぐクリエーター・プラットホームである「START EBISU」のART ACTIONの一環として、
アート企画展「SHARE」をキュレーションした。展示のテーマは、わかち合う、共有する、つながる、ひろがる。
エリア内のギャラリーやアートスポットを網羅したART WALK MAPの発刊しかり、最近、じわじわとこのエリアで、アートやデザイン、編集などの仕事をしているメンバーがゆるやかに連携しつつあり、おもしろい動きが増えてきた。
さて、小雨の中をPacifc Furniture Serviceへ。
ご存知の方も多いと思うが、アノニマスな「道具」が好きな人は要チェックのインテリアショップである。
「道具」好きの私も、もちろん大ファンである。
家具だけではなく、こんな感じのレトロな、「どこかの国から来た」風情のドアノブなどの建築パーツもとても良い。
被写体に寄って撮ってみると、良い具合に背景がぼけてくれた。普通のコンパクトデジカメではこうはいかない。
雨は止まないものかと空を仰ぐ。
いつもは目に止まったことのない、曇天の宙を這う「電線」の群れに釘付けになる。
フレーミングしてしまうと、これはもうコンテンポラリーアートだな。
空のつぎは、地を眺める。ただのアスファルト。ただの白線。
「切り取られる」ことで、それは、ただの標識から、何か意味深いアートワークのように見えてくる。
Pacific Furniture Serviceから道路を渡ってちょっと裏路地に入ったところに建つlimArt。
アートブックと時を経たぬくもりのあるインテリアを扱うギャラリーショップ。
向かいには、antiques Tamiserというアンティークの道具を扱う粋な店がある。
そこには、古風な、錘で閉じるドアが入口にある。ここのドアも同じ仕組み。
スローな空気感と「素材」感に充ちた空間がとても心地よい。
扱っている本は、知的でシャープなアート、グラフィック、写真、建築関連。
本の見せ方も、それ自体がひとつのアートワークとして扱われている。
良きコンテンツ(内面)とその見せ方(外面)。両方大事。
limArtを出て、Pacific Furniture Service沿いのマルタン・マンジェラなんかがある通りに戻る。
道なりに歩いて駒沢通りを越えたところにある公園がその名も「恵比寿公園」。
恵比寿在住在勤のクリエーターがゆるやかに連携して、公園のベンチに合法的にペインティングしたアート・イベントから2年近く経つ。
恵比寿公園の先の五叉路の角の古ビルの2Fには、
自分の事務所兼ギャラリーであるgift_labがある。
入口に立つ、この梯子の上の謎の箱。
アニシュ・カプーアの作品のようなこの黒い穴に頭を突っ込んで耳を澄ますと、
旅先で録った音のスナップが聞こえてくる。
視覚をさえぎることで、聴覚に集中させる試み、sound trip。
まったく予期できない周期でその震えは、音を発し、LEDの光を明滅させたりする。
このとき展示していた神谷泰史の作品。
「道具」と同じくらい「タイポグラフィ」を偏愛する私の宝もの。
同じく、壁に書き残された、今年の6月にここで個展を行ったCharlotte Hubertの手書きの作品タイトル。
彼女は1週間、毎日ここに通って、毎日タイトルを鉛筆で消しては書き換えていた。
毎日再生された作品。そして、その痕跡。
ビルの入口にギャラリー名がペイントされた椅子がちょこんと置いてあるのが「開廊中」のサイン。
オーナーの2人はNYで知り合ったというカップル。
何だかこの風景、ちょっとNYのようだ。
すでに日が落ちた黄昏時の暗さの中で撮ってみたが、
感度が良い。フラッシュなしでかなり鮮明に写っている。
近未来にあらゆる照明器具はLED化するのだろうか。
蛍光灯も白熱電球も大好きなのだけれども。
地球のためにはしかたないのだろうな。
こうして、太古から、さまざまなものが、
生まれて、過ぎ去って、忘却されてきたのだろうなと思う。
五叉路に戻って、その先の恵比寿駅の高架下をくぐる。
このカメラの機能で気に入ったのがモノクロで撮影できること。
色彩が抜けることで、見慣れた景色が「ここではないどこか」に変わる。
不思議だ。
無彩色の、知る人ぞ知る「ひいらぎ」の鯛焼き。
どうも昔から、鯛焼きというものが無性に好きだ。近所にこんな店があるのは嬉しい。
すごく近寄って撮ったのだが、このカメラは、手前にきれいにピントが合っていてそれも嬉しい。
この、奥手をわざとぼかした感じにできるのも、今回とても気に入った機能。
重く感じる体を引きずって、ちょっとぼうっとしながら。
しかし、何というか、無心にファインダーをのぞいているうちに、いつの間にか、夢中になっていた。
そうだな。自分は写真を撮るのがけっこう好きだったのだ。
重たい一眼レフを持ち歩いたこともあったのに。
だけれども、仕事の記録で使うデジカメの全自動感に慣れすぎて、気を入れて写真を撮ることがなくなって、オートマティックな行為になっていた。
このNikon 1 J1は、すごく「意識」についてきてくれる感じ。
もっと近く、もっと遠く、ここを切り取りたい、と言った「気分」と「視野」と
切り取られた写真の間にギャップがないのにとても驚いた。
あれ、ここをこんなふうに撮ったはずだったのにな、という違和感がない。
これはとても気持ちのよい体感。自分の眼が機能拡張した感覚。
この写真散歩が終わった時、少し高揚した何だか元気になった自分がいた。
写真を撮る楽しさをもう一度味わわせてくれたこのカメラに感謝。
少し中断していた、とにかく気分でシャッターを切る感覚で、スケッチみたいな撮影が日常的に復活できそうである。
デザインユニット「gift_」のクリエイティブ・ディレクター。オフィス兼ギャラリーショップ「gift_lab」では主として本・雑貨部門担当。http://www.giftlab.jp/
treasured trash=環境問題×デザイン・アート等、ソーシャル・クリエイティブなプロジェクトの立ち上げや企画制作、空間デザイン方面では、国内外の展覧会、商空間、居住空間のコンセプト立案から企画制作、スタイリング等を手がける。アートだけでなくデザインの領域からもボーダーレスなキュレーションを行なっている。現在、”大地の芸術祭”の里である越後妻有地域で、アーティスト・イン・レジデンス×シェア・オフィスのプロジェクトを立ち上げ中。
池田史子さんが、恵比寿の風景にシャッターをきる。
Nikon 1 J1
≫ Nikon 1 J1 製品ページ
*1 レンズ交換式デジタルカメラにおいて。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 のワイド端使用でシングルエリアAF時。当社測定条件による。2011年9月21日時点。
*2 世界最多(73点)フォーカスポイントについては、シングルポイントAF設定時に選択可能です。