昭和の古い建物を改装したというやさしく開放的なLIGHT BOX STUDIOの空間には、春から夏にかけての木々を思わせるようなやわらかいグリーン色のイスや、おもわず土いじりをしたくなるようなレンガ色や濃いこげちゃ色のスツールが、ちいさなグループになっていくつも並んでいる。マテリアルもクッションもふっくらとやさしく、机やパーテーションも十分に隙間があって風通しがよい。「眺めてみると、池に漂う浮き草のような感じに見える」のでFlowLoungeと命名したそうだ。
Gardenのエレメントを家具に置きかえた「FlowLounge」シリーズ。
コンピューター端末一つで、カフェも、公園もオフィスになる現在。ネットワークの発達によって、物理的距離に対するネガティブさは薄れてきたが、逆に、実際に隣同士に座っている人までもがチャットやメールで会話するというように、直接的なコミュニケーションがおびやかされる状態になりつつあること、またオフィスで自然と人が集う場所が、端においやられた喫煙所や給湯室という実態から、果たしてこれがオフィスの人が集う場所として正しいのか?という疑問がわいたという。「じゃあ安積さんにとって自然に集いたくなる場所はどこなの?と聞かれて思ったのがGardenだったのです。」
パーテーションはガーデンフェンスの「空間をブロックしないしきり」という役割をうまく置き換えている。
確かにヨーロッパにおけるGardenのアクティビティは多様だ。休みの日の天気のいい日には寝転がって途中になっていた本の続きを読んだり、側を通る人と声をかけあったり、そのうちに2~3人が近づいてきてお茶をのみながら談笑したり、初夏がスタートしたとたんに、あちこちでバーベキューパーティがはじまったり、、とGardenは一人から多数までのアクティビティを包容する。
日本人の庭の感覚とは少し違うかもしれないが、安積氏は日本の原風景である「縁側」にこのGardenアクティビティは通じるものがある、と言う。
「今オフィスで必要とされているコミュニケーションとは何か?」「居心地のいい空間とは?」という普遍的な大命題に対し、イギリスが日常生活の拠点であるからこそ発想されたであろう安積伸の「Garden」というコンセプトと、その発想を家具におきかえた「FlowLounge」シリーズ。これからの日本のオフィス空間で、どんな自然な集いが生まれてくるのか楽しみである。
プレゼンテーションを終えたばかりの安積さん。
多くの来場者が家具を取り囲んで談笑する様子はまさにGarden Party。
Chihiro Murakami
Chihiro Murakami