FLOATING MUSEUM(仮称)外観イメージ 建築設計:YANAGI + ART BASE
韓国の新安郡・安佐島に、アート作品と建築の意匠を一体化した「FLOATING MUSEUM(仮称)」が、2024年6月に開館する予定だ。芸術監督・設計は、アーティスト・柳幸典と柳が率いるチーム「YANAGI + ART BASE」。ユネスコ自然遺産にも登録され、数多くの生態系の宝庫となっている干潟や広大な塩田など、安佐島の特色のある景観を最大限に活かしながら、地域全体を再生していくグランドデザインが提案されている。
その背景には、多数の島々から成る人口約3万人の自治体・新安郡の、少子高齢化や若者の都市流出などによる人口減少問題がある。地域活性化のため、「文化芸術の島」を目指そうとする新安郡が主体となり、1つの島に1つの博物館や美術館を建設する「1島1ミュージアム」プロジェクトが、2019年に立ち上がった。このためにスタートしたのが、「安佐島プロジェクト」だ。
プロジェクトの安佐島・総合監督を務めるのは姜瑩基。岡山県の犬島精錬所美術館(2008年竣工)の仕事に着目したことから、「YANAGI + ART BASE」に白羽の矢が立ったというわけだ。
美術館「FLOATING MUSEUM(仮称)」は、4つの異なるコンセプトと3つの機能(企画展示室2つ、休憩室)を備える、7つのキューブで構成されている。キューブ1では、柳の代表作である「アントファーム」シリーズの新作《EURASIA 2021》(2021)《GANGNIDO》(2021)が展示される。 例えば、《EURASIA 2021》は、2021年のユーラシア大陸の国々の国旗をかたどった砂絵の作品で、この砂絵の中を蟻が移動して巣穴を掘り進め、現代社会のフレームを脱・再構築していくものだ。
ほかにも、漆黒の空間の泥の玉《Wandering Mud》(2024)や光の空間の塩の玉《Wandering Salt》(2024)などの新作も展示。キューブ4の太陽と鉄をコンセプトにした《Icarus Cell(仮称)》(2024)は、水面に浮かぶ7つのキューブの鏡面による方向喪失感と浮遊感と併せて、本美術館の核となるコンセプトとして一体性を成している。
「7つのキューブは、韓国全羅南道西部の多島海および地球の大陸の数を表し、大きさが違う各キューブは鏡素材の外壁により風景を擬態するとともに、鏡面相互の重複した映り込みによる方向喪失感と、大地から切り離された浮遊感は不安定な現代を表象している」と、アーティスト・芸術監督の柳幸典はコメントする。