デザイン大国として知られるデンマーク。とりわけ1940年代から60年代にかけては、歴史に残る名作家具が多く生み出された。2022年7月23日から10月9日に東京都美術館で開催される企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」では、北欧デザインのなかでも「椅子」にフォーカスし、モダン家具の黄金期を築いたフィン・ユールによる作品の数々と、その独創的なデザインが生み出された背景、そしてデンマーク家具デザインの変遷をたどる。
ユールは「彫刻のような椅子」とも評された、優雅な曲線を特徴とする家具で知られるデザイナー。同時代の家具デザイナーたちの多くが家具の専門学科や家具工房の出身であるのに対し、ユールは美術史家になることを夢見ながらもアカデミーで建築を学び、建物の設計やインテリアデザインにたずさわるなかで家具デザインを手がけた。身体を抽象化したようなやわらかなフォルムは座って心地よいばかりでなく、彫刻作品にも似た静謐な存在感を放ち、建築や美術、あるいは日用品と濃密に響き合いながら、空間の調和を生み出す役割をも果たしているかのようだ。
同展では椅子研究者の織田憲嗣が研究資料として収集してきた20世紀の家具、日用品のコレクション「織田コレクション」(北海道東川町が所蔵)から、試作として作られた貴重な一脚から名作と言われる椅子まで、バラエティに富んだ作品をセレクトしている。
さらに見るだけでなく座ることができるのも同展の特徴。デンマークの様々な椅子に実際に座って、そのデザインを空間的に体験することができる。フィン・ユールをはじめ、デンマークの優れたデザイナーたちの豊かな発想から生まれた椅子に座り、それぞれのスピリットを体感したい。
フィン・ユールとデンマークの椅子
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
会期:2022年7月23日~10月9日
休室日:月、9月20日(9月19日は開室)
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
https://www.tobikan.jp/finnjuhl/