大阪中之島美術館「すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合」展示風景より。中央は田中敦子《作品》(1961、大阪中之島美術館蔵)
2022年12月〜23年1月にかけての冬休み・年末年始期間に開催される全国の注目展覧会をピックアップ。関東以外の展覧会の見どころを、詳細と合わせて紹介する。気になる展覧会はTABアプリでブックマークも忘れずに!
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弘前れんが倉庫美術館では、同館が美術館になる前の煉瓦倉庫で開催された、弘前市出身の現代美術家・奈良美智による三度の展覧会を振り返る展覧会が行われている。「奈良美智展 弘前」、通称「ナラヒロ」と呼ばれたこれらの展覧会は、市内外のボランティアの助けを借りることで実現。街に活気が生まれ、アートの拠点ができることへの可能性について市民が意識を向けるひとつの大きな機会となった。
資料や作品の展示、リサーチを通じて、「ナラヒロ」というひとつの事例を基点としつつ、地域のアートプロジェクトや美術館、そしてそこに関わる人々をとりまく複数の問いへの接近を試みている。展示の様子はフォトレポートをチェック。
会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:9月17日〜2023年3月21日
展覧会詳細
青森県の十和田市現代美術館では、百瀬文の個展がスタート。百瀬はこれまで、他者とのコミュニケーションの複層性をとらえた映像作品を通じて、身体・セクシュアリティ・ジェンダーといったテーマを扱ってきた。本展では、『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジ(緒方恵美)や『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィ(田中真弓)など、アニメ作品において女性声優が少年役を演じることに注目した新作や、関連する過去作が公開される。展覧会に合わせて、批評家gnckによる百瀬へのインタビューはぜひ読んでおきたい。
会場:十和田市現代美術館
会期:12月10日~2023年6月4日
展覧会詳細
全身が青い人体彫刻など、単色の作品で知られるイヴ・クライン。彼を中心に、イタリアの空間主義運動や日本の具体などの同時代の作家、さらに現代の作家を加えて、彼らの芸術に共通する「非物質性」というテーマに主眼を当てる展覧会が、金沢21世紀美術館にて開催中だ。気候変動やウィルス、インターネットなど無数の「見えないもの」が起こす渦中で生きる私たちに、いま、ここにないものを感じ、想像し、不確かな現在を乗り越えていく喜びと力を示すことを試みる。フォトレポートはこちら。
会場:金沢21世紀美術館
会期:10月1日~2023年3月5日
展覧会詳細
長野県立美術館では、地元出身の彫刻家・戸谷成雄の個展が開催中。日本を代表する現代彫刻家として知られる戸谷。国内外の戦後美術において制度として解体された彫刻と向き合い、「表面」「構造」といった独自の彫刻概念をもとにその本質から再構築しようと試みてきた。本展では、初期から近年の作品まで代表作を含め約30点を、制作年に縛られることなく、コンセプトに沿って展示される。展覧会と合わせて、戸谷へのインタビューもぜひチェックしてほしい。
会場:長野県立美術館
会期:11月4日~2023年1月29日
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高松市立美術館で開催されていた「見る誕生 鴻池朋子展」が静岡県立美術館へと「リレー」された。2020年にアーティゾン美術館で開催された個展「ちゅうがえり」が示すように、従来の美術館のシステムを解放する取り組みを展開してきた鴻池朋子。高松市立美術館での展示では、動物の糞や動物の皮といった美術館では見ることのないものや、手芸など美術として扱われないことも多い作品が展示された。ただ展示が巡回するのではなく、「リレー」し変化することを試みている本展。作品はもちろん、展示空間の構成やその変化にも大いに注目したい企画だ。
会場:静岡県立美術館
会期:11月3日~2023年1月9日
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東京国立近代美術館で、大きな反響を呼んだゲルハルト・リヒターの大規模個展。アブストラクト・ペインティング、フォト・ペインティングといった代表シリーズが一堂に会する本展は、愛知県の豊田市美術館へ巡回。すでに東京で見た人も、谷口吉生設計の同館で、リヒター作品がどのように展示されるか見てはいかがだろうか。展示の見どころをまとめたフォトレポートや志賀玲太による本展レビューは要チェック。展示の裏側を知りたい方は、本展のキュレーター、桝田倫広と鈴木俊晴の対談(前編・後編)をぜひ読んでほしい。
会場:豊田市美術館
会期:10月1日~2023年1月29日
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ポップ・アートの代表的作家であるアンディ・ウォーホルの大回顧展は、京都市京セラ美術館にて開催中。ウォーホルが商業デザインの世界で頭角をあらわし、キャンベルスープ缶やマリリン・モンローなど、同時代の大量消費社会のイメージを作品に使うことで人気アーティストになっていった過程を追う。京都には、1956年の世界一周旅行や74年の来日時などに訪れており、彼が愛用した京都ゆかりの品々も紹介される。展示の様子はフォトレポートをチェック。
会場:京都市京セラ美術館
会期:9月17日~2023年2月12日
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戦後すぐに兵庫県の芦屋で結成され、画家の吉原治良を中心に活動した美術家集団「具体美術教会(具体)」。その歩みを「分化」と「統合」というふたつの視点からとらえ直す大規模な回顧展が、今年2月に開館した大阪中之島美術館と、それに隣接する国立国際美術館にて開催されている。展示の見どころはフォトレポートを、具体についてより詳しく知りたい人は、兵庫県立美術館学芸員・鈴木慈子によるインサイトや、中嶋泉によるレビューをぜひチェックしてみてはいかがだろうか。
会場:大阪中之島美術館、国立国際美術館
会期:10月22日~2023年1月9日
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国立新美術館で開催されていた李禹煥の大規模個展は、兵庫県立美術館へ巡回。「もの派」を代表する作家として知られる李禹煥は、1934年に韓国で生まれ、大学時代に来日。60年代後半に本格的に制作を始めた。本展では、視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた「関係項」シリーズ、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に集結する。国立新美術館での展示風景はフォトレポートを、作家についてより詳しく知りたい人は小川敦生による李禹煥の「余白」についてのレビューもチェックしてほしい。
会場:兵庫県立美術館
会期:12月13日~2023年2月12日
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1965年にデビューして以来、オブジェや絵画、写真などのメディアを横断しながら制作しつつ、唐十郎や寺山修司による演劇の舞台美術やポスター原画なども手がけた高知県出身の美術家、合田佐和子。作家の没後初にして、過去最大規模の回顧展となる本展は、初期のオブジェから初公開となる晩年の鉛筆画シリーズまで、300点を超える作品や資料を体系的に検証を試みる。展覧会タイトルの「もう帰る途(みち)もつもりもなかった」とは、合田が晩年の手稿に残した言葉。立ち止まることなく作風を変化させ、激しくも華やかに駆け抜けた作家の生涯を、展覧会を通じて知るまたとない機会だ。
会場:高知県立美術館
会期:11月3日~2023年1月15日
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福岡市美術館は、藤野一友、岡上淑子という美術家夫婦の二人展を企画した。二科会を中心に活動し、細密な描写による幻想絵画で知られる藤野に対して、進駐軍が残した洋雑誌の写真をもとにしたコラージュ作品が印象的な岡上。時代順にふたつの個展形式で展示・構成される本展を通じて、シュルレアリスムからの影響や女性の身体をモチーフとするスタイルの共通点や、男性優位のまなざしや女性が抱いた夢や苦悩など、同時代についても見えてくるものがあるはずだ。
会場:福岡市美術館
会期:11月1日~2023年1月9日
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福岡県で生まれ、スイスやドイツなど国内外で活動した画家・彫刻家の横尾龍彦(1928-2015)。その個展が北九州市美術館で開催される。もともと北九州での美術教師時代だった横尾は、65年にスイスへ。聖書などを題材とした幻想的な絵画によって、澁澤龍彦や種村季弘といった文学者にも注目された。ドイツに拠点を設けた80年代以降は、東洋の書道を思わせる、力強い筆線と激しい飛沫が特徴の抽象画を数多く制作し、日独の美術の架け橋となった。本展では、国内のアトリエに残された作品を中心に、その制作に迫る。なお本展は、神奈川県立近代美術館 葉山館などへも巡回予定だ。
会場:北九州市美術館
会期:12月17日~2023年1月22日
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