サウンド・アーティストevalaの個展「evala 現われる場 消滅する像」が、12月14日より東京・初台にあるNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]で開催される。会期は2025年3月9日まで。企画はICC主任学芸員の畠中実。
evalaは音楽家、サウンド・アーティスト。立体音響システムを駆使し、独自の“空間的作曲”によって先鋭的な作品を国内外で発表する。2000年代以降は個人としての活動のみならず、多くのコラボレーションを行うなど幅広い分野で活躍してきた。
本展は、evalaが主宰する音を通じた新しい知覚の探求プロジェクト「See by Your Ears」の集大成ともいえる内容。プロジェクトの出発点となった2013年の作品《大きな耳をもったキツネ》は鈴木昭男とのコラボレーションを通して、ICCの無響室のために制作されたサウンド・インスタレーション・シリーズ。人気を博した本作はこれまで3度展示されており、今回が4度目となる。本展では《大きな耳をもったキツネ》をはじめ、その後国内外で展開された数々の作品が一堂に会する。
「See by Your Ears」とはその名のとおり、「耳で視る」ということをコンセプトに作品を制作するプロジェクト。
「サウンド・アートというと、アートの文脈のなかでは何かしらの視覚的な造作が作品に含まれていて、それが音を出しているということが多い。いわば『目で聞く』という体験。(いっぽうで)僕の作品は『耳で視る』。視覚要素を極限まで削った、音だけという体験です。無響室のなかに入っていただくと真っ暗で、目の前の手も見えないほど。とことん音に身体中をまさぐられたり、身体ごと吸い込まれたり、という体験になります」(evala)
5階のギャラリーAとBを両方使った本展は「普段のICCでの展覧会よりも大規模」と畠中。「See by Your Earsのコンセプト『耳で視る』とはどういうことなのか、(様々な作品を通して)考えていただきたい」と語った。
ICC内最大の展示室であるギャラリーAには壮大な新作インスタレーションが登場。吸音体でできた大きな山のような構造物が会場中心に設置され、鑑賞者はその上に登り、思い思いの姿勢で作品を楽しむことができる。作家自身の記憶に残る場所の環境音をはじめ、様々な音が混ざり合うサウンドに包みこまれるような感覚に身を委ねたい。
一つひとつ形状の異なるオリジナルのスピーカーが大量に配置され、そのあいだを歩きながら「音の芽吹き」を味わうことができる《Sprout "fizz"》(2024)も圧巻だ。
evalaのは独自の音響システムを駆使した独自の「空間的作曲」を行うことで、一般的に人々がとらえている「聴く」と「見る」という感覚の境界を曖昧にし、鑑賞者に新たな知覚のあり方を提示する。「夢は目を使わないで視るもの。そのようなところを志している。目で見られないものをどう生み出すか」(evala)。
本展ではこの独自のアプローチがどのように発展し、結実しているのかを、鑑賞者の耳と全身を通して存分に堪能することができるだろう。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)