広告デザイナーを経てアーティストとして、そして美術家の夫と家庭を支える妻、母として──女性が直面する社会的な負担を抱えながら、60年以上にわたり「ひとのかたち」をテーマに制作を続けてきた中辻悦子。新作シリーズが揃う個展「Where are you from?どこからきたの」が、大阪のYoshiaki Inoue Galleryで11月8日〜30日に開催される。
中辻悦子は、1937年大阪府生まれ。株式会社阪神電鉄百貨店部で広告デザイナーとして勤務し、62年に退職。翌年東京画廊で初個展を開催以降、「ひとのかたち」をテーマに制作、各地で個展やグループ展に開催してきた。98年に現代版画コンクール展大賞、99年には『よるのようちえん』(作:谷川俊太郎、絵:中辻悦子)で絵本原画の世界的コンクールとして知られるブラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリ、2004年には宝塚市制50周年記念文化功労賞受賞を受賞。夫である美術家・元永定正(1922〜2011)とともに数々の絵本や立体作品も手がけてきた。
中辻の長いキャリアのなかで進化し続ける表現が、新たな段階に達していることがわかる、本展「Where are you from?どこからきたの」。抽象と具象が融合し、人間の感情や存在に対する深い共感を呼び起こす新作絵画は、点・線・色彩を用いて、人間の存在や揺らぎを描き出し、鑑賞者に人間の内面的な美しさや複雑さを改めて考えさせる作品が集まる。
ギャラリー2階では新作100号から200号の大作を中心に約6点、3階には新作小品と大作合わせて約15点、合計20点余りが展示される予定。いまなお進化を続ける作品をぜひ見てほしい。