現在、東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「アントワープ王立美術館コレクション展」。ベルギー近代画家の油彩画70点が展示されている。
3大巨匠のルネ・マグリット、ポール・デルヴォー、ジェームズ・アンソールをはじめとした39作家による、19世紀末~第二次世界大戦前にかけての作品だ。
展示の構成は四章:「アカデミスム、外光主義、印象主義」「象徴主義とプリミティヴィスム」「ポスト・キュビスム:フランドル表現主義と抽象芸術」「シュルレアリスム」。
アカデミックな構成に厳粛さもあるが、気ままに展示室の奥へ進んでいっても、気になる絵画の前で自然と立ち止まっていた。いくつか紹介してみよう。
レオン・スピリアールトの数枚の絵は、そのミステリアスな青色に目が止まった。煤(すす)のように黒ずんだ青。真っ黒に見える部分や、緑が混じっている部分……謎めいた色彩なのだった。
ジョルジュ・モレンの描いた「室内」は、柔らかくて明るい色あいに、踊るようなタッチ。母親がおもちゃで遊ぶ小さな子どもを、隣の部屋から覗いている風景だ。ほほえましくて、心が和むような作品。
フリッツ・ファン・デン・ベルへの「ポール=グスターヴ・ファン・ヘックとその妻ノリンの肖像」は、シックでモダンな雰囲気の作品だった。
男性はいくつかの画廊を所有するオーナーで、フランドル表現主義画家たちの活躍に尽力したキーパーソン。そして奥方のほうが、ベルギーの近代ファッションデザイナーの草分け的な人物だったというのだ。着ている服と凛とした姿からも、想像が膨らんでくる。
王立美術館があるベルギーのアントワープといえば、近年のモード界ではドリス・ヴァン・ノッテンやマルタン・マルジェラを輩出した地。先達のノリン女史の肖像に、なんとなくうれしく見入った瞬間だった。