彼の作品はインプロヴィゼーションのような、瞬発的な感覚の刺激によってうまれるかたちや色を追求していながら、決してドロ臭くなく、むしろおだやかな優しさやしっとりした深さを感じさせられるところが私は心地よいと思う。本人はグラフィックデザイナーとしての経験から残る「意識」の価値と、作家として感じる「無意識」の価値の間で自身をさらけだすことにまだまだ葛藤があるというが、個人的にはその葛藤をずーっと持ち続けていただいて、そこから生まれる新しい発見から、もっともっと作品を進化させていってほしい、と思う。
これまでやってきたこと、そしてこれからやろうとしていること、というまさに「今」をテーマとしたこの展覧会は、田中七星にとって、新スタートのためのプレゼンテーションとみることができるだろう。
彼の作品はこれからどんな成長をとげ、どんな場所で行きていくのだろう?商業空間?雑誌の中?コマーシャル?私はデザイナーなのでつい、どんなコミュニケーションの可能性があるか考えてしまう。そう、彼の作品はこんなふうに人をインスパイアするような作品なのだ。
新しい空気を感じたり、創作のインスピレーションを刺激したい人に是非お勧めしたい展覧会である。
Chihiro Murakami
Chihiro Murakami