私がダニエル・アーシャムを知ったのは3年前程で、アート関係の雑誌やサイトではなく、Instagram上で作品写真を見つけたのだった。壁と一体化して宙に浮いた人の抜け殻のような、ベールの作品がとても印象的だった。1980年アメリカ生まれのダニエル・アーシャムは、国境を越えて国際展やミュージシャン、ファッションブランドとのコラボレーションなど華やかな舞台で横断的に活躍する人気作家だ。Instagram もよく更新していて、最新のプロジェクトや作品をいち早く見ることができる。
そんなアーシャムの作品を実際に見たい、と思ってから、2016年渋谷のNANZUKAで日本初の個展が開催された。2度めとなる今回はNANZUKA以外にも、六本木のペロタン東京、そしてDover Street Market銀座3つの会場で開催した。(ギャラリーペロタンの所属作家同士、同じように国境やジャンルを超えて活躍する村上隆やJR、KAWSとも仲良しの様子 ※アーシャムは写真左)
ダニエル・アーシャムの世界観
アーシャムは2013年から、仮想考古学といった意味で捉えることができる”Fictional Archeology”シリーズの作品で、今日私たちの身の回りにある製品・物事が、自然に戻るかのように真っ白に劣化して朽ち果てて発見される“未来”の世界を作り出した。本来の色彩と質感を失った事物は、同時にその機能や意味も失った化石のように見える。そして、今回、2つのギャラリーの展示でも、NANZUKAでは人の不在、ペロタン東京ではキャラクターを主題にした消費文化の興亡を思わせるシリーズで、時を経た文明や文化の消滅という主題が垣間見える。アーシャムは、ファッションブランドとのコラボレーションプロダクトや建築ユニットでのプロジェクトまで、多様な活動を展開しているが、共通して生気がなく無機質で、廃墟のような作品や空間づくりが特徴として伺える。しかし悲壮感や哀愁はなく、どちらかというとSF映画や漫画で見るような「かっこいい」近未来的世界である。
ダニエル・アーシャムを買う
アーシャムの作品に見られるもうひとつのおもしろさは、ファッションブランドなどとのコラボレーションプロダクトを自身の世界観や作品に取り込んでいることである。例えば、アーシャムの制作スタジオのスタッフの「制服」は、昨年ストリートファッションブランドのKithと発表したコラボレーションラインのものである。さらに、今回NANZUKAでの作品の布の裏に隠れる人は、昨年アーシャムがadidasとコラボレーションしたスニーカーを履いているので、ぜひ注目してみたい。その他にもNANZUKAでは、香港の時計ブランドAnicornとのコラボレーションウォッチを会場で販売している。アーティストのウェブサイト上のショップでは売り切れとなっているので、手に入れることができる貴重な機会だ。2会場での展示に加え、Dover Street Market銀座で展開していたのは、アウトドアブランドHUNTING WORLDとのコラボレーションアイテムだ。オリーブグリーンやネイビーが定番のHUNTING WORLDのバッグに真っ白な限定モデルが登場した。
アーシャム自身は、自身の作品とコラボレーションプロダクトを別のものとして考えているようである。しかし、実際に使うことができるモノとしてアーティストが作り出す世界観を手に入れることができるのは魅力的だ。今後も新たなコレボレーション企画発表もありそうで、目が離せない。
■ Architecture Anomalies
日程:2018年5月23日(水) ~ 6月30日(土)
11:00~19:00(日・月・祝祭日定休)
会場:NANZUKA
ウェブサイト:http://www.nug.jp/jp/exhibition/2018danielArsham.html
■COLOR SHADOWS
日程:2018年5月23日(水) ~ 6月30日(土)
11:00~19:00(日・月・祝祭日定休)
会場:ギャラリー ペロタン東京
ウェブサイト:https://www.perrotin.com/exhibitions/daniel_arsham—color-shadows/6540
■HUNTING WORLD × Arsham Studio Standard
日程:2018年5月26日(土) ~ 6月12日(火)
11:00~20:00
会場:Dover Street Market銀座
ウェブサイト:https://huntingworld.com/jp/feature