「CAFAA賞2023」グランプリに髙橋銑が選出。近現代彫刻の保存修復に携わりながら、作品制作を行うアーティスト

髙橋には賞金300万円と、3ヶ月のニューヨーク滞在の機会が与えられる

高橋銑

第4回目のCAFAA賞グランプリが決定

現代芸術振興財団が主催する「CAFAA賞2023」のグランプリに、保存修復の知識や経験を起点とし、彫刻、映像、インスタレー ションなど多岐にわたる作品を展開する髙橋銑が選出された。髙橋には、賞金300万円とNY・ブルックリンでの3ヶ月間の滞在制作の機会が授与される。

髙橋銑 二羽のウサギ 2020 2チャンネルビデオ 宇都宮美術館「これらの時間についての夢」での展示風景 撮影:堀蓮太郎
Cast and Rot No.1 2019 ニンジン、Hi-mic1080、リグロイン、石灰硫黄合剤、木、ステンレス 撮影:木奥恵三
アポトーシス:シルバーホワイト 2020 鉛白 撮影:立石従寛

審査員を務めたのは、野村しのぶ(東京オペラシティアートギャラリー シニア・キュレーター)、吉竹美香(インディペンデント・キュレーター)、斯波雅子(J-Collabo エグゼクティブ・ディレクター& 理事)。

受賞について、髙橋は以下のコメント寄せている。

これまで日本国内での活動に力を注いできた私は、コロナによる人々の移動の制限が徐々に緩められていくことを受けて、海外に活動の幅を広げられるきっかけとなる出来事は作れないかと気を揉んでいました。そのようなタイミングでこのCAFAA賞を頂けたことに大きな喜びを感じています。NY滞在では事務局の皆様と作り上げていくプログラムと向き合いつつも、現地で出会うであろう多くの人々との関わりの中で得られる物をまず大切にしていこうと思います。このような貴重な機会を頂けたことに深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

また、審査員3名からは以下のコメントが寄せられた。

野村しのぶ
最終選考に選出された5名の多くが、作品制作以外の活動(キュレーション、修復、建築設計)を行っているという点が、現在の作家のあり方の一面を表しているようで興味深かった。他分野における活動の有無に限らず、作品制作とは社会/日常生活における様々な体験と不可分であることを改めて感じさせられた。最優秀賞を受賞した髙橋銑はブロンズ彫刻の修復家でもある。アノニマス(匿名的)な存在と思われがちだが、修復とはその度合いや方向づけが多分に恣意的であることを自覚し、日々目と手で他者の作品を観察し続けることでしか得られない独特の視点、感覚によって制作される作品が光った。海外での滞在でその目と手がなにを見て作るのか、楽しみである。

吉竹美香
数多くの優れた作品のなかで、髙橋銑の制作には私たちが現在直面している日常生活の状況に対する繊細な感受性が反映されていた。日本やアメリカの重要な美術作品の修復を行ってきた貴重な体験を通して、マテリアリティーに対する目に見えない優れた知覚能力を持っていることに驚いた。彼がニューヨークで、修復家と研究を進めながら、繊細な専門知識を新しい表現の次元を制作に活かして行くことを楽しみにしている。

斯波雅子
日米文化交流を活動の基軸とするJ-Collabo及びこの度新設することになったBushwick Experimental Art Foundation(BEAF)は、現代芸術振興財団(CAF)の初の米国パートナーとしてレジデンシープログラムを開始するにあたり、第一弾アーティストの選出にはNYならではの出会いと体験を活かせる事を重視した。髙橋銑は修復師としての視点から、リサーチと制作を組み合わせた活動が非常にユニークで興味深い作家で、彼がNYで様々なアート機関やカテゴリーの作品に触れることで創作に豊かさがもたらされることを期待し、初めての米国滞在により、今後の作家活動に予期せぬ変化が生まれることを楽しみにしている。

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