公開日:2024年8月9日

今月の読みたい本!【8月】アクセシビリティ、スマホとSNSと写真、表現の自由、藤森照信、アシスティブ・テクノロジー、戦争とミュージアム、哲学の終わりなど

アート、映画、デザイン、建築、マンガ、ファッション、カルチャーなどに関するおすすめの新刊を毎月紹介。

誰のためのアクセシビリティ? 障害のある人の経験と文化から考える

田中みゆき 著
リトル・モア 2000円+税 7月29日発売

「ルール?展」「音で観るダンスのワークインプログレス」「オーディオゲームセンター」など、障害のある人を含む鑑賞者とともに様々なイベントや展覧会を企画し、表現の見方やとらえ方を再考し、アクセシビリティを研究してきた著者が、障害のある人と対話・実験しながら書き上げた初エッセイ。 わたしたちは、自分と異なる身体と感覚を持つ人のニーズをどのくらい想像しているだろう? 「アクセシビリティは、社会のあらゆる場所が連携しながら、つくる人と使う人が一緒に更新していく、終わりのないプロセスなのだ。」

撮るあなたを撮るわたしを 自撮りとスクショの写真論

大山 顕 著
講談社 1500円+税 7月25日発売

高性能化するスマホのカメラ、SNS、生成AIの登場。まったく新しい視点を私たちに授け、存在そのものも変化し続ける「写真」とはそもそも何なのだろうか。人間と顔と写真についてスリリングに論じた『新写真論 スマホと顔』を著した大山顕の新作は、スマホとSNSの台頭に伴う新たな写真論。気づけば猫の写真ばかり撮ってしまうのは、なぜ? その謎が解けるかもしれない。

表現の自由 「政治的中立性」を問う

市川正人 著
岩波書店 1000円+税 7月22日発売

本書は政治的中立性という曖昧な概念によって人々の言論活動を制限することの危険性を説く。公務員の政治的行為や放送、公共施設の利用などの際に使われることの多い政治的中立性。この言葉はいつしか独り歩きし、「何となく、これを言ったらまずいのではないか」という空気がこの国のそこら中に漂っている。「県立公園からの追悼碑の排除」など、最近のトピックも取り上げながら、 政治的中立性と民主主義について問いかける一冊。

日本木造遺産 千年の時を超える知恵

藤森照信 著 藤塚光政 写真
世界文化社 2700円+税 6月8日発売

建築史家/建築家の藤森照信が深い文章を、建築写真界の大御所である藤塚光政がキレのある写真を撮る……。さらに、それぞれの木造遺産について構造学の観点から、東京大学生産技術研究所の腰原幹雄がコラムを寄稿。「家庭画報」で2019年から足かけ5年も続いた贅沢な連載が待望の書籍化。「東大寺 南大門」「善光寺 本堂」「春日大社 御本殿」など、32の木造遺産を雑誌とは異なる仕立てで再構成した、後世に残したい一冊だ。

ハイブリッド・ヒューマンたち 人と機械の接合の前線から

ハリー・パーカー 原著 川野太郎 翻訳
みすず書房 3000円+税 7月18日発売

アフガニスタン紛争地に従軍して両脚を失った作家が、障害の支援技術(アシスティブ・テクノロジー)をテーマに綴ったエッセイ。兵士だった頃に強さが価値だった著者にとって、新たな生活はエイブリズムとの格闘でもあった。チタン‐骨結合を用いた義足の導入者や開発者、支援機器の研究者、義肢の可能性を拡げるアートプロジェクトなど、著者は機械との接合の前線を拓く人々の話を聞きに行く。義肢の歴史や、障害者の権利をめぐる闘いの足跡にも行き当たりながら、アシスティブ・テクノロジーと人間の関係の現在を描き出す。

戦争ミュージアム──記憶の回路をつなぐ

梯久美子 著
岩波書店 920円+税 7月22日発売

日本が当事国であった戦争を知る世代が少なくなるなか、忘れてはならない記録と記憶の継承を志す場があり、人がいる。戦争の時代を生きた人間を描くノンフィクションを著してきた作家が、「戦没画学生慰霊美術館 無言館」「東京大空襲・戦災資料センター」「長崎原爆資料館」など、各地の平和のための博物館を訪ね、そこで触れた土地の歴史と人々の語りを伝える。未来への祈りをこめた、いまと地続きの過去への旅。

芸術と宇宙技芸

ユク・ホイ 著 伊勢康平 翻訳
春秋社 4500円+税 8月1日発売

最新技術が世界を便利なだけのものにしていく、ハイデガーの言う「哲学の終わり」のなかで、新しい始まりを見いだすにはどうしたら良いのだろうか? 香港出身の哲学者ユク・ホイはアートに着目し、西洋と中国の芸術から芸術形式を取りだし、新たな技術の思考を見いだそうとする。西洋芸術の論理(悲劇者の論理)と中国芸術の論理(道家の論理)を形式化し、ふたつの再帰的な芸術の論理から、AIに代表される現在のテクノロジーのあらたな方向性や枠組みを考察する。

【出版社様へ:新刊情報募集】
新刊情報や献本のご送付先については、以下のアドレスまでご連絡ください。
editors@tokyoartbeat.com

Art Beat News

Art Beat News

Art Beat Newsでは、アート・デザインにまつわる国内外の重要なニュースをお伝えしていきます。