公開日:2024年7月10日

今月の読みたい本!【7月】岡崎乾二郎、保存修復、ジル・ドゥルーズ、アートの本能、ルール、デザイン、洞窟壁画など

アート、映画、デザイン、建築、マンガ、ファッション、カルチャーなどに関するおすすめの新刊を毎月紹介。

而今而後(ジコンジゴ)──批評のあとさき (岡﨑乾二郎批評選集 vol.2)

乾二郎 著
亜紀書房 3900円+税 7月16日発売

絵画、彫刻、映像、建築など、ジャンルを超えて作品を創造し、美術批評を中心に執筆を続けてきた岡﨑乾二郎。その思想の軌跡を辿り、現在地を明らかにする「岡﨑乾二郎批評選集」シリーズのvol.2にして完結巻が発売される。vol.1『感覚のエデン』毎日出版文化賞を受賞した注目作だ。而今而後(=いまから後、ずっと先も)の世界を見通し、芸術・社会の変革を予見する比類なき批評集。本作のために岡崎が描き下ろしたカバー、表紙のドローイングにも注目したい。

亜紀書房 公式Xアカウントより

改訂 保存修復の技法と思想: 古代芸術・ルネサンス絵画から現代アートまで

田口かおり 著
平凡社 2200円+税 6月21日発売

傷つき、色あせた作品に「延命」を施す保存修復の仕事。修復士たちが作品を前に重ねてきた試行錯誤の歴史を、豊富な実例と文献から丹念に読みとく名著の改訂版。ルネサンス期の絵画など、時を経た作品ばかりではなく、本書では、現代美術の保存修復についても多くのページが割かれている。公共空間で変容しつづけるパブリック・アートの保護、新素材を使用した作品の保管、形を持たないインスタレーション作品の記録など、多様な素材から構成される現代美術の作品群への介入は、いかなる思想と技法をもって展開されるのか。保存修復という仕事について考えながら、美術作品と向き合いたい。

非美学:ジル・ドゥルーズの言葉と物

福尾匠 著
河出書房新社 2700円+税 6月24日発売

初の著作『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』「紀伊國屋じんぶん大賞2019」第5位を獲得し、文芸誌『群像』での連載「言葉と物」「哲学の店 フィロショピー」を催すなど、注目を浴びる哲学者・批評家の福尾匠の最新作。 2021年3月に提出された博士論文をリライトし、確かな手つきで磨き上げられたドゥルーズ論=批評論。哲学を「概念の創造」として定義したドゥルーズにとって、芸術を通して概念を創造する批評とは何だったのか。ドゥルーズの「言葉と物」の二元論から、東浩紀千葉雅也という今世紀の日本を代表する批評家が論じてきた「否定神学批判」の可能性と限界に迫る。

なぜ人はアートを楽しむように進化したのか

アンジャン・チャタジー 著 田沢恭子 訳
草思社 2700円+税 6月24日発売

人間にとって、アートは生きるうえで必要不可欠なものか?世界のいたるところに太古から存在しているアート。人はそれを生み出す本能をあらかじめ持ち、進化してきたのだろうか? 脳科学、神経科学、進化心理学などの見地からこの疑問に取り組む画期的書籍。ラスコーの壁画、パブロ・ピカソモナ・リザジャクソン・ポロックアンドレス・セラーノフェリックス・ゴンザレス=トレス艾未未などにふれながら、人が生きるうえで「美」が果たす役割と、いかにして人がアートを愛するに至るのかを明らかにする。

ルール?本 創造的に生きるためのデザイン

菅俊一、田中みゆき、水野祐 著
フィルムアート社 2400円+税 5月18日発売

法律家の水野祐、コグニティブデザイナーの菅俊一、キュレーターの田中みゆきがディレクションし、オンライン予約の取れない展覧会として話題になった、21_21 DESIGN SIGHTの企画展「ルール?展」(2021)が、遊び心と創造力に満ちた「本」になって帰ってきた! 本書では「ルール?展」の展示作品に触れながら、日常の様々な場面で遭遇するルールの存在や影響を取り上げ、ルールを「つくる」「使う」「見直す」「更新する」ことでわたしたちの社会をデザインによってどのようにかたち作ることができるのか、多角的な視点から探る。

菅俊一・田中みゆき・水野祐による全編書き下ろしのテキスト+座談会に、宇野重規(政治哲学者)、清水晶子(フェミニズム/クィア理論研究者)、小田原のどか(彫刻家/評論家)、細馬宏通(人間行動学者)、会田大也(ミュージアム・エデュケーター)、木ノ戸昌幸(元NPO法人スウィング理事長)による寄稿を加えて再編集・成書化。

見晴らしのよい時間

川瀬慈 著
赤々舎 2500円+税 6月11日発売

遠く離れた旅に出遭う人々の在りよう、周縁に想いを凝らし、存在の痛苦、創造性、したたかさを抱き込み、その交感から立ち上がる詩を映像や文章として作品にしてきた映像人類学者・詩人の川瀬慈。本書は、パンデミックや戦渦の時代に、日常で希薄になりつつあった“イメージの生命”とつながりを確かめ、聖域の奥へとイマジネーションを試みるなかで生まれた。洞窟壁画を模写した水彩画、歌、エチオピア移民のコミュニティ、イタリア軍古写真との遭遇── イメージの還流に揺さぶられながら、著者の眼差しは「見晴らしのよい時間」へと通貫していく。挿画は平松麻。写真家・港千尋との対談「アビシニア高原、一九三六年のあなたへ ─ イタリア軍古写真との遭遇」も収録。

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