公開日:2022年10月3日

今月の読みたい本!【10月】デザインの歴史、暁斎、村上春樹と映画、NFTアートなど

アート、映画、デザイン、建築、カルチャーなどに関するおすすめの新刊を毎月紹介。

『新しいアートのかたち:NFTアートを通して考えるアートの価値』

施井泰平 著 平凡社 960円+税 9月20日発売

2021年にクリスティーズのオークションでビープルの作品が約75億円で売却されるなど、近年大きな注目を集めているNFTアート。しかし、その熱狂を訝しく感じている人々もいっぽうで多いのではないか。「『NFTアートとは何か?』をはじめとする一連の疑問のなかには、より深いレベルで腑に落ちる形では答えることのできない、ちょっと大袈裟に言うと『大いなる謎』のようなものが、どうしても残ってしまうのではないかと思います」(「はじめに」より)という現状認識から出発する本書は、NFTを支える情報技術の基本から、アートの価値とはなんなのかといった問いまでをカバーしながら、NFTアートに現在と未来を解説する。坂井豊貴、山峰潤也、武田徹との対談や、「NFT、NFTアート関連用語集」も収録。

『カラー版 図説 デザインの歴史』

暮沢剛巳、伊藤潤、山本政幸、天内大樹、高橋裕行 著
学芸出版社 2800円+税 9月23日発売

産業革命以後のデザイン史の変遷について、アーツ・アンド・クラフツ運動やアール・ヌーヴォーの時代から、ポストモダニズム、現代的なテーマまでを概観する1冊。図版450点以上を掲載する、デザイン史の新たな教科書と言えるだろう。歴史の流れがわかる年表付。

『名画の中で働く人々 :「仕事」で学ぶ西洋史』

中野京子 著 集英社 1900円+税 9月26日発売

人気シリーズ『怖い絵』の中野京子による新刊。風俗画や歴史画といった絵画に描かれてきた働く人々のイメージから、その時代や地域の固有性を持つ「職業」にフォーカスする。ラインナップは、闘牛士 、侍女、香具師、女性科学者、思想家、警官、ファッション・デザイナー、異端審問官など、現代社会で馴染みのあるものからないものまで様々だ。中世から現代アメリカ絵画までを扱い、視覚的な体験から西洋史のある一面を知ることができるだろう。

『村上春樹 映画の旅』

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 監修
村上春樹、アーロン・ジェロー、長谷正人、髙村峰生、小澤英実、木原圭翔、岡室美奈子、イ・チャンドン、濱口竜介、川﨑佳哉 著
フィルムアート社 2200円+税 10月13日発売

小説家・村上春樹は、これまで様々な場で、自身にとって身近なものとして映画について語ってきた。早稲田大学演劇博物館にて開催される企画展「村上春樹 映画の旅」の公式図録として作られた本書は、展覧会の内容を伝えるのみならず、村上のキャリアを通じての「映画」との関係性に焦点を当てる。村上による書き下ろしエッセイ「自分自身のための映画」を特別収録するほか、村上作品の映画化を手がけたイ・チャンドン監督、濱口竜介監督へのインタビュー、そして映像論、文学論、メディア論等を専門とする執筆陣による広範なテーマの論考を収録。春樹ファンにとっても映画ファンにとっても、見逃せない1冊だ。

『ローマの眠り:あるいはバロック的遁走』

谷川渥 著 月曜社 2000円+税 10月13日取次搬入予定

『鏡と皮膚―芸術のミュトロギア』、『シュルレアリスムのアメリカ』など多数の著作を発表してきた美学者・批評家の谷川渥による新刊。「古代性とバロック性を博捜するローマ芸術を巡る思索記。20世紀画家クレリチから18世紀画家・建築家ピラネージへ! ローマを逍遥し、エルサレムに跳び、マグナ・グラエキアを彷徨する美学的遁走曲(フーガ)。」(公式サイトより)

『異彩を、放て。「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える』

松田文登、松田崇弥 著 新潮社 1500円 10月19日発売

2018年設立された「ヘラルボニー」は、福祉とアートの領域を跨いで活動する福祉実験ユニットであり、日本全国の福祉施設に在籍するアーティストとともに、プロダクトの制作や販売などを行うアートライフブランド。本書は創業者のふたりが生い立ちから起業に至るまで、現在やこれからの展望を語った内容。知的障害のある人の作品との出会いから生まれたブランド企業はどのようなビジョンを思い描いているのか、またアートを通したビジネスの一端を知ることができるだろう。

『暁斎絵本』

日野原健司 著、太田記念美術館 監修 青幻舎 1600円+税 10月27日発売

幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい)。その自由奔放な画風は近年人気を集め、展覧会・書籍等で紹介されることも多い。しかし、これまであまり注目されてこなかったジャンルとして「絵本」がある。これは児童向けの本ではなく、暁斎の様々な絵を1冊にまとめた木版の画譜のこと。骸骨から解剖図、蛙、猫、妖怪などを描いたユーモアあふれる絵は、「北斎漫画」とも並ぶようなユニークさ。本書は代表的「絵本」から224点を厳選し、全作品に絵解きの解説をつけて再構成。「画鬼」と呼ばれた暁斎の、隅々まで行きわたる創意を堪能したい。

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