小佐野重利 著 みすず書房 4800円+税 4月8日発売
芸術と科学はいかにして交差してきたのか。中世・ルネサンスを中心に西洋美術史の様々な著作を生み出してきた筆者による新刊は、最先端の研究成果から、人間の知覚と美の関わりを探る1冊。芸術家と科学者が未分化であった時代を代表するレオナルド・ダ・ヴィンチから、美術史における科学画像リテラシー、美術と脳の関係を探るニューロサイエンスの視点、実験美術史の試みなど、科学研究との協働による新たな美術史の開拓を試みる。
室賀清徳 監修 西山萌、グラフィック社編集部 編
グラフィック社 2700円+税 5月9日発売
『アイデア』編集長を経て現在『The Graphic Design Review』編集長を務め、グラフィックデザイン、タイポグラフィについての編集、評論、教育にかかわる室賀清徳が監修。独自の活動で注目される若手グラフィックデザイナー約40組に取材し、その基本的な姿勢やプロジェクトへの取り組みを紹介する。談話、豊富な図版、詳細な解説などで構成。
清水晶子 著 文藝春秋 980円+税 5月20日発売
近年アート・シーンでも頻繁に語られ、制作のテーマに据える新たな世代も登場している「フェミニズム」。でも、改めてフェミニズムとはなんなのか、いまを生きる人々にとってどのような視点を授けるものなのか。その歴史から、現代カルチャーにおけるフェミニズムや、中絶、セックスワーク、女性リーダー、性暴力といった諸問題まで、東京大学教授の清水晶子が解説。現在進行形のフェミニズムに触れることができるだろう。アーティストの長島有里枝、スポーツ学者の井谷聡子、作家の李琴峰との対談も収録。
横山勝彦+半田滋男 監修 「美術検定」実行委員会 編
美術出版社 1700円+税 5月20日発売
アートの仕事と展覧会の舞台裏についてキーワードごとにまとめた、アート・マネジメントの入門書。美術館をはじめとするアートの制度や歴史、環境について、また美術館等で行なわれている実務等の領域について解説。2018年発売の『アートの裏側を知るキーワード』改訂版だが、コロナ禍の影響で変わりつつあるアートの現場の状況を反映し更新された。
国際交流基金 企画 三上豊ほか 編
平凡社 2700円+税 5月21日発売
ヴェネチアで隔年開催される世界最大級の現代アートの展覧会、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展。その日本公式参加70周年を記念する1冊。日本は1952年の第26回展に初参加、58年には日本館が開館。本書は歴代の日本代表作家に加え、企画展や他国パヴィリオンに招待された作家も含め、これまでにビエンナーレの舞台に立った約 180名の作家を一挙に紹介。各回の展示風景写真と出品作品図版のほか、作家やキュレーターのコメント、国内外の展評の抜粋を掲載。国際展を巡る日本の国内体制、日本館の建設、アペルト、賞制度、ビエンナーレの拡張に関するコラム等も収録する。
大塚英志 著 太田出版 1800円+税 5月25日発売
2016年の『シン・ゴジラ』から、21年『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』、現在公開中の『シン・ウルトラマン』、23年公開予定の『シン・仮面ライダー』へと至る、庵野秀明による「シン・シリーズ」。それを「『おたく』の歴史を踏まえた自覚的な『つくり直し』」だとし、その方法と美学的出自を探る大塚英志の新著。「第一章 赤いエッフェル塔の歴史学」「第二章 第3村問題と郷土映画」「第三章 原形質と成熟」の3章構成。「戦後の『おたく』表現のフェティシズムや美学の出自は、戦時下に狂い咲いたアヴァンギャルドが、戦後、政治的にウォッシュされたものであるというのがぼくの一貫した主張だが、『シン・』シリーズは、その美学や方法を「正しく」運用し直し、戦後おたく表現を「修正」する試みなのだ」 (「あとがき」より)。
大澤夏美 著 国書刊行会 1800円+税 5月25日発売
日本全国の美術館、歴史博物館、自然史博物館、動物園、水族館を訪ね歩き、その活動とミュージアムグッズを紹介する著書の第2弾。ミュージアムのオリジナルグッズには「博物館の財産がたくさん詰まっています。収蔵品、研究成果、建築、ロゴマーク、博物館を中心としたコミュニティなど、その博物館が大切にしたいもの、守りたいものの魅力が込められているのだと思います」(「はじめに」より)という筆者の導きとともに、グッズを通して新しくミュージアムと出会える1冊。かわいい、おもしろい、ほしい!というワクワク感いっぱいのグッズ写真を見るだけでも楽しいが、各地のミュージアムの地道な活動に光をあてて紹介するテキストも充実。
河野真太郎 著 講談社 2300円+税 5月26日発売
ディズニー映画から日本のテレビドラマなどのポピュラー・カルチャーを、フェミニズムの視点から論じた『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、2017)の著者による新刊。今回はポストフェミニズム的状況下における「男性性」をテーマに、マンガから映画まで様々な表象を取り扱う。『怪獣8号』(松本直也)、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)といった人気のマンガから、『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督)、『バーニング 劇場版』(イ・チャンドン監督)、『千と千尋の神隠し』をはじめとするスタジオジブリ映画まで、多様なケーススタディをもとに現代のミソジニーや弱者男性論、障害、ケアなどを縦横無尽に論じる文芸批評。
植本一子・滝口悠生 著 1600円+税 5月29日発売
写真家の植本一子と、小説家・滝口悠生による往復書簡。2021年11月から2022年4月までにやりとりした8通の手紙(メール)を収録。話題は家族について、書くことについて、ひとりになることについてなど多岐にわたる。「歳をとることで、おそらく母は小さくなっていく。それに反比例して、私はきっとまだまだ強くなる。なんとなく、そこが逆転する瞬間にしか、対等に話は出来ないのではないか、そんな風に感じています。」(植本)。「そんな、来てみるまではこんな場所に来るとは思いもしなかった場所でお昼ご飯を食べ、ビールを飲みながら、ああひとりだ、と思う。娘のことを忘れるわけではないけれど、遠い、と思う。」(滝口)。
武田砂鉄の特別寄稿も掲載。表紙の立体作品はO JUN。植本による自費出版で、5月29日の文学フリマでの販売後、書店でも販売される。
五十嵐太郎 著 岩波書店 520円+税 6月7日発売
近年、公園や路上などの公共空間で多く見られるようになった「排除アート」。座れない階段や寝そべることができないベンチ、公園に掲げられた過剰とも言える禁則事項など、建築物が本来の目的以外で使用されないようにするものだ。ホームレスをはじめ社会的弱者などを排除する明確な意図により生まれた、これらのネガティブなデザインをもつ構造物は、なぜか日本では排除"アート"と呼ばれる。これらは「アート」と呼べるのか、そもそもなぜ設置が拡大しているのか。建築史家の五十嵐太郎がその歴史や背景を追いながら、日本の公共空間づくりの不寛容さをあぶり出す。
カジャ・シルヴァーマン 著
松井裕美+礒谷有亮 訳 月曜社 3600円+税 6月16日発売
現在ペンシルベニア大学美術史学科教授を務める美術史家であり、美術と文学、思想の横断的研究で知られる著者による写真論。「序章」「第一章 再臨」「第二章 とどまらないデヴェロプメント」「第三章 カメラのなかの水」「第四章 ある種の共和国」「第五章 私 あなた」「第六章 死後の現前」に加え、2本の訳者解説を収録。様々な事象をアナロジーで結び、新たな写真史をつむぎだす。
中島晴矢 論創社 2200円+税 6月17日発売
アーティスト中島晴矢による初の単行本。約2年間にわたるウェブサイトの連載をまとめたもので、「『街並みの風景=タウンスケープ』をモチーフとして、個人的な思い入れが強い街にまつわる物語を描いた、エッセイと油彩画からなる書籍」(作家のステートメントより)となる。これまで出身地である東京郊外のニュータウンや、オリンピックを控えた東京の街並みを舞台に作品を制作してきた著者が、新型コロナウイルスのパンデミックや大規模イベントなどによって変貌をし続ける東京の姿を、独自の視点で描きとめた新たな都市論。
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