エリイ 著
新潮社 1800円+税 1月31日発売
現在、森美術館で大規模な回顧展を開催中のアーティスト・コレクティヴChim↑Pom。そのメンバーであるエリイの初エッセイ集。ミッション・スクールの頃から親しんだ聖書の言葉を引用しながら、日常生活やChim↑Pomでの活動、家族との関係、人工授精による妊娠とコロナ禍における出産といった出来事を綴る。飲酒、嘔吐、病、出産といった個人の身体感覚と社会との関係に関する描写、生と死への洞察、そして「自分の選択肢なしに学校に通うという、14年間も続けたことについて納得したかった」(筆者コメント)という聖書を織り交ぜた独特の筆致に、筆者の鋭利なまなざしが光る。
ニコラ・ブリオー 著
武田宙也 訳
フィルムアート社 2600円+税 1月26日
1998年に『関係性の美学』を刊行し、現代美術の新たなパラダイムを切り拓いたキュレーター、ニコラ・ブリオー。その著書の待望の初邦訳。グローバル化とともに様々なイメージ、モノ、言説が氾濫する現在、筆者は「ラディカル」なモダニズムとも、多文化主義的なポストモダンや多様で同時的な組織網たるリゾームとも異なる、「ラディカント(radicant)」的在り方を備えた「オルターモダン」という視座を提示する。前進するにつれて根を伸ばし張りなおしていくようなこのオルターモダニティとはどのようなものなのか。現代の美学を探究する。
佐野明子、堀ひかり 編著
青弓社 2400円+税 1月31日発売
戦時下の1945年、日本初の長篇アニメーション『桃太郎 海の神兵』が公開された。国策アニメーションとして制作された本作は、これまで「プロパガンダ/平和」というイデオロギー的な側面から論じられてきたものの、映像テクストとそれを支える社会的な背景は正面から検証されてこなかったという。本書では、『海の神兵』の映像テクスト分析を中心におこない、ユビキタス的なありよう、異種混交性・越境性、キャラクター造形の特異性を浮き彫りにして、『海の神兵』の映像技法の先駆性・実験性も明らかにする。編著者のほか、渡辺泰、大塚英志、秦剛、木村智哉、キム・ジュニアンによる論考を収録。
高田マル 編著
絵画検討社 2600円+税 2月発売
画家であり、出版社を運営する高田マルが1年かけて聞き集めた、「絵を見る人」の忘れられない絵の話54編を集録。 「絵と私たちはどう関係し、絵のなにを覚えているのでしょうか? 1対1の会話で記憶の絵画を描き出す本書は、それを緩やかに浮かび上がらせる試みです」(高田のnoteより)。コロナ禍において、著者は前著の出版記念展示を延期するなど、発表の機会を失い、ひとり自宅で絵を描く日々を送っていた。絵を描くこと、絵を見せることについて考えるなかで、多くの人々にとって絵を見るとはどのようなことなのかという問いに思い至り、2020年7月〜21年8月にかけて54人に話を聞いたという。それぞれの話は堅苦しいものではなく、話者の固有の立場、固有の経験から、様々な「忘れられない絵」について語られている。ハンディな新書サイズながら、全944ページ、厚さ4cmの大ボリューム。試し読みはこちらから。
奥山由之 著
青幻舎 8000円+税 2月7日発売
2010年のデビュー以来、数々の写真集や展覧会で作品を発表し、現在のクリエイティブ・シーンを牽引する奥山由之。本著はこれまで12年間にわたり奥山が手がけてきた数々のクライアントワークを1冊にまとめた写真集。ミュージシャンや俳優とのコラボレーション、ポカリスエット、JR SKISKIをはじめとする広告、大河ドラマ『麒麟がくる』のメインビジュアル、『VOGUE US』『GINZA』『SWITCH』『花椿』といったエディトリアルワークなど、奥山自らがセレクトした作品400点以上を収録、500ページを超える大作となっている。伊藤貴弘(東京都写真美術館学芸員)、河尻亨一(編集者)が寄稿。
指田菜穂子 著
アートダイバー 2500円+税 2月22日発売
「絵で百科事典をつくる」という発想のもと、言葉から連想されるあらゆる事象を1枚の画面に緻密に描き込む芸術家・指田菜穂子。初の作品集となる本著は、「日本文学」がテーマ。1901(明治34)年〜25(大正14)年に発表された小説25篇を選び出し、その登場人物を作品名としたシリーズ「日本文学大全集」を制作した。各作品には、絵の細部に何が描き込まれているかがわかる図解と文字による解説がつけられており、その文字数の多さから通常の判型には収まらず、片観音折り・Z折りという製本を取り入れた特殊なアートブックとなっている。カバーの裏側にまで印刷があったり、着物から発想を得たデザインなど、遊び心が随所に見られる造本が魅力。日本文学研究者のロバート キャンベルが解説を寄稿。
デイヴィッド・ホックニー、マーティン・ゲイフォード 著
藤村奈緒美 訳
青幻社 3500円+税 2月24日発売
現代を代表するアーティスト、デイヴィッド・ホックニーと、美術史家マーティン・ゲイフォード。有史以来の視覚芸術に通底する表現の本質に迫った『絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで』の共著者が、再びコンビを組んだエッセイ本。80歳になったホックニーは、都会から離れ、人生で初めて自然ゆたかな地であるフランス北部のノルマンディー地方にアトリエを構えた。この晩年の選択に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが重なり、その暮らしのなかで、聖書から哲学、文学、音楽をはじめ、古今東西の芸術の先人たちへ想いを深めていたという。その思索の折々を綴った、ゲイフォード宛ての手紙やSNSのやりとり、関連図版を収録。
イアン・ネイサン 著
著島内哲朗 訳
フィルムアート社 3000円+税 2月26日発売
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『グランド・ブダペスト・ホテル』『犬ヶ島』など、独自の美意識に貫かれた個性的な映画を生み出し、世界中で熱狂的に愛されている監督ウェス・アンダーソンの評伝。現在日本でも公開中の最新作『フレンチ・ディスパッチ』に至るまで、長編・短編を含む全作品、さらに監督が影響を受けた人物や映画作品、プライベートな交友関係についても網羅的に紹介する。
DK社編 佐川英治、岸本美緒 監修
東京書籍 6300円+税 2月28日発売
5000年前の神話上の君主から清朝の最後の皇帝溥儀まで、中国の歴史をヴィジュアルでたどる全400ページの大図鑑。先史時代と初期の人類に始まり、中国最初の王朝の登場と初期の中国の戦乱がどのようにして皇帝主導の王朝を生み出したのか、そして中国の長い帝国時代を、貴重な多数の美術品や工芸品を織り交ぜて解説する。本著は、ヴィジュアル表現が得意なイギリスの名門出版社であるDK社と、百科事典の分野では世界的権威である中国大百科全書出版社とが、数年の歳月をかけた協業によって制作。日中国交正常化50周年であり、記念展「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」が日本各地で開催される今年、ヴィジュアルを通して中国の歴史を改めて学ぶのに格好の1冊。
イアン・ネイサン 著
阿部清美 訳 フィルムアート社 3000円+税 3月11日発売
『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』『シェイプ・オブ・ウォーター』などで知られる映画作家、ギレルモ・デル・トロ。モンスターや魔術、H・P・ラヴクラフトの小説やルイス・ブニュエルの映画、『ウルトラマン』などの特撮など、幼少期から様々な作品を偏愛し、独創的な世界を作り上げる作家となったデル・トロの、生い立ちから現在に至るまでの軌跡を網羅的に紹介。最新作『ナイトメア・アリー』『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』に至るまでの、すべての作品を解き明かす。さらに小説家、プロデューサーとしての側面や、未完プロジェクトの詳細、盟友アルフォンソ・キュアロン 、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥとの共同作業についての詳述も収録。
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