マデリン・アンダーソン監督 映画『アイ・アム・サムバディ/ I Am Somebody』より 1970
6月24日より、ブラック・フェミニスト・アートとそのアクティヴィスト的側面に注目したプロジェクト「抵抗と生存の戦略:ブラックフェミニズムのアートアクティヴィズム(Black Feminist Art Activism: Strategies of Resistance and Survival)」がオンラインでスタートしている。
同プロジェクトは、1974年にボストンで結成されたブラック・レズビアン・フェミニストのコレクティヴであるコンバヒーリバー・コレクティヴ(Combahee River Collective)の思想に焦点を当て、彼女たちの思想からブラック・フェミニスト・アートとその政治的側面に迫ることを目的とするもので、「一般財団法人竹村和子フェミニズム基金」の助成を受けて行われる。
プロジェクトは「フィルム」「トーク」「コラム」の3つの要素からなる。「フィルム」では、6月24日深夜0:00から6月30日23:59までの1週間限定で、黒人女性映画監督マデリン・アンダーソンによる日本初公開の『アイ・アム・サムバディ/ I Am Somebody』(1970)を日本語字幕付き(字幕:西山敦子)で配信。また、後述する「トーク」で登壇するアヤナ・ドォージエ(Ayanna Dozier)による短編映画『ママン・ブリジット / Maman Brigitte』(2021)も併せて配信する。
7月初旬頃より掲載予定の「トーク」では、ブラックフェミニスト映画を専門とするアヤナ・ドォージエ(Ayanna Dozier)とアーティスト・イン・レジデンス・ギャラリー(A.I.R. Gallery)の現ディレクターであるロクサナ・ファビウス(Roxana Fabius)が、ブラックフェミニストたちの芸術的・政治的実践とコンバヒーリバー・コレクティヴの思想について解説。
そして「コラム」では、ハワルデナ・ピンデル(Howardena Pindell)のビデオ作品、シェリル・デュニエ(Cheryl Dunye)らの短編映画、キャリー・メイ・ウィームズ(Carrie Mae Weems)の写真、エマ・アモス(Emma Amos)の絵画、L.A.リベリオンの映画運動など様々なブラックフェミニストたちの芸術的/政治的実践についてのテキストが並ぶ。
同プロジェクトの軸となるコンバヒーリバー・コレクティヴは、黒人解放運動における男性中心主義、フェミニズムにおける白人中心主義、異性愛規範、そして階級的抑圧の視点の欠落を1977年のコンバヒーリバー・コレクティヴ宣言(The Combahee River Collective Statement)において指摘。この宣言では、女性は決して一枚岩の存在ではないことを鋭く描き出し、女性に対する抑圧が人種や民族、地域、階級、性別そしてセクシュアリティに基づいた差別と、帝国主義・植民地主義の歴史を引き継ぐ資本主義という男性中心主義的支配システムが組み合わさり引き起こされていることを主張しました。
多大な影響力を持った同宣言だが、アートの領域においてどのように作用したのか触れられることは少なく、日本のアートシーンにおいてブラックフェミニストが紹介される機会もいまだ稀だ。それはアートという領域が、2022年の今日になっても男性中心主義的・白人中心主義的であることと決して不可分ではないだろう。そういった問題意識から、同プロジェクトでは、コンバヒーリバー・コレクティヴの思想がどのようにブラックフェミニストのアート作品と共鳴し、新たな攪乱の可能性を作り出しているかに迫っている。
抵抗と生存の戦略:ブラック・フェミニズムのアートアクティヴィズム
オンラインにてプロジェクト公開中
主催:subversive records
助成:一般財団法人竹村和子フェミニズム基金
https://subversive-records.com/