公開日:2024年7月19日

ビル・ヴィオラが73歳で死去。ヴィデオアートのパイオニアとして知られる世界的アーティスト

7月12日、アルツハイマー病の合併症のためカリフォルニア州の自宅で亡くなった

ビル・ヴィオラ 出典:Jean-Baptiste LABRUNE a.k.a. jeanbaptisteparis, CC BY-SA 2.0 via Wikimedia Commons

世界的に著名なヴィデオアーティスト、ビル・ヴィオラが7月12日、アルツハイマー病の合併症のため、カリフォルニア州ロングビーチの自宅で亡くなった。享年73。

ヴィデオアートのパイオニアとして知られるヴィオラは、1951年にニューヨークのクィーンズで生まれ、1972年に最初の作品を制作。1973年にシラキュース大学を卒業し、ナム・ジュン・パイクらのアシスタントも務めた。大学卒業にイタリア・フィレンツェへ移り住み、初期のヴィデオアートスタジオであるart/tapes/22で働きながら、マリオ・メルツ、ジョーン・ジョナス、ヴィト・アコンチらと交流。水や火、大地などの要素や、生と死、再生や信仰などの哲学的なモチーフを主題とし、50年以上にわたって人間の根源に関わるテーマを探求する作品を世界中で発表した。

1995年にはヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ代表を務め、1997年にホイットニー美術館で16のインスタレーションで構成される大規模な展覧会「Bill Viola: A 25-Year Survey」を開催。この展覧会は2年間にわたって世界6つの美術館を巡回した。2003年からは個展「パッション:受難」が、J・ポール・ゲティ美術館を皮切りに世界巡回。その表現方法は多岐にわたり、2000年にはナイン・インチ・ネイルズとのコラボレーションを行ったほか、2005年にはパリ・オペラ座『トリスタンとイゾルデ』のためのヴィデオ作品、2014年、2016年には、英国国教会大聖堂における初の常設ヴィデオアート作品として、ロンドンのセントポール大聖堂のための作品を制作した。

日本との関わりも深く、1976年に初来日。再来日した1980年には1年半のあいだ滞在して禅の思想や伝統文化に触れ、ヴィデオ作品《はつゆめ》を制作した。その後もたびたび来日し、2006年から07年にかけてアジア初の大回顧展「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」が森美術館で開催された。2006年にはフランス政府よりフランス芸術文化勲章を授与、2011年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。

近年は、2017年にビルバオ・グッゲンハイム美術館でキャリアを網羅する回顧展が行われたほか、2020年から21年にかけて韓国の釜山市立美術館で大規模な個展「Bill Viola: ENCOUNTER」が開催。さらに2021年には、モスクワのプーシキン美術館で「Bill Viola. The Journey of the Soul」が行われた。

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