アークヒルズ、六本木ヒルズ、表参道ヒルズ、虎ノ門ヒルズなど、森ビルが運営する様々な「ヒルズ」。これらの大型再開発施設に2023年11月24日、新たに「麻布台ヒルズ」が加わる。
麻布台ヒルズのコンセプトは「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街 - Modern Urban Village -」。広大な中央広場を街の中心に据え、オフィス、住宅、ホテル、インターナショナルスクール、商業施設、文化施設など、多様な都市機能が融合する。
ほかのヒルズと異なる大きな特徴は、緑の豊かさ。高低差のある地形を生かして、低層部の屋上を含む敷地全体を緑化することで、都心の既成市街地でありながら約2万4000㎡もの緑地を確保。ヘザウィック・スタジオがデザインする低層部の建築物と緑の調和が、ここだけにしかない風景を作り出しそうだ。
森ビルと言えば森美術館に代表されるように、文化を重視した都市作りが特徴。麻布台ヒルズでも、総施設面積約9300㎡におよぶミュージアムとギャラリーを中核に、街のあらゆる場所にパブリックーアートが展示される。
文化発信の中核となるのは「麻布台ヒルズギャラリー」。ここでは美術館仕様の施設・設備を備え、多様なジャンルの文化を発信する。開館記念展では「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が調和する周期」を開催。同ギャラリーの関連施設として、カフェやポップアップショップ等を開催するスペースもオープンするという。
開館から1年で世界160以上の国と地域から約230万人の動員を達成したお台場の人気スポット「森ビル デジタルアート ミュージアム:チームラボボーダレス」も、麻布台ヒルズに移転。新作や日本未発表作品なども多数加わり、2024年1月にオープン予定。
そのほかにも、尾田栄一郎『ONE PIECE』、久保帯人『BLEACH』、池田理代子『ベルサイユのばら』など、集英社の「マンガアート」が集まる「集英社マンガアートヘリテージ」の初のリアル店舗。The Chain Museumのリアル店舗となるギャラリー兼レストラン「ギャラリーレストラン舞台裏」もオープン。
約6000㎡の中央広場は人々が憩うオープンスペースになるが、なかでもランドマークになりそうなのが、ヘザウィック・スタジオがデザインしたユニークな大屋根「The Cloud」がかかる「麻布台ヒルズアリーナ」。この隣接する芝生エリアにパブリックアートが点在する。
同エリアに展示されるのは、奈良美智《東京の森の子》(2023)、ジャン・ワン《Artificial Rock. No.109》(2015)、曽根裕《石器時代最後の夜》(2017/2023)。麻布台ヒルズの中核を担う超高層ビル・森JPタワーには、オラファー・エリアソン《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(2023)が顔を揃える。
これらのパブリックアートは「空間の壮大なスケール感とヒューマンスケールを融合し、人間と宇宙のつながりを感じられ、麻布台ヒルズで生成される自然界のエネルギーを可視化するような作品」をテーマに、森美術館がキュレーションを行った。
建築ファンなら注目したいのは建築やインテリア。タワー外観のデザインはPC&P(ペリ・クラーク・アンド・パートナーズ)、低層部デザインのトーマス・ヘザウィック(ヘザウィック・スタジオ)は、今回が日本での初プロジェクトとなる。森JPタワーの商業デザインは藤本壮介と小坂竜、住宅デザインはグレン・ブッシェルバーグ、ジョージ・ヤブ、マルコ・コスタンツィ、スー・K・チャン、プロジェクトのコンセプトワークはタイラー・ブリュレが起用された。
アートファンにとっての「ヒルズ」と言えば、やはり森美術館のある六本木ヒルズを思い浮かべるが、麻布台ヒルズはどのような存在感を示していくだろうか? オープンを楽しみに待ちたい。