「創造の体感」をコンセプトとするアーティゾン美術館が、毎年1回開催している“ジャム・セッション”プロジェクトが、今年も開催される。「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」の会期は、2023年9月9日〜11月19日。
ブリヂストン創業者である石橋正二郎が、半世紀にわたって個人収集した石橋財団のコレクションは約3000点を越える。西欧の近代絵画と日本の近代絵画、彫刻や陶磁器、さらに現代美術にまで視野を広げている。「ジャム・セッション」は、石橋財団コレクションの特定の作品からインスパイアされた新作や、アーティスト作品とのセッションによって生み出される新たな視点を紹介する展覧会だ。
第4弾となる今回、フィーチャーされるアーティストは山口晃。1969年東京生まれ、東京2020パラリンピックで公式アートポスターを担当した山口晃は、古美術と大和絵に大きな影響を受けた。日本の伝統的絵画の様式を用い、油絵という技法を使って描かれる作風が特徴だ。
日本は近代を接続し損なっている、いわんや近代絵画をや。
写実絵画やアカデミズム絵画に対する反動としての、あるいはその本来性を取り戻すためのものが西欧の〈近代絵画〉であろう。
が、写実絵画やアカデミズム絵画の歴史を持たぬ本邦に移入された近代絵画とはなんであろう。
石橋財団コレクションを前にして、山口晃はそう語る。
ジャム・セッションの対象に彼が選んだのは、雪舟の《四季山水図》とポール・セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》だ。山口流セッションと題して、雪舟に基づくインスタレーション、そして、セザンヌ理解に向けた自由研究が展示される。また、視覚認知機能を改めて意識すべく、山口の追体験的なインスタレーション群も展開される。「近代」「日本的コード」「日本の本来性」とは何かを問い、歴史や美術といった個人を圧する制度のただ中にありながらも、先立つ欲動を貫こうとする山口晃の姿を見ることができるだろう。
ほかにも、2019年に放映されたNHK 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』のオープニングタイトルバック画となった《東京圖》や、2021年7月に完成した東京メトロ日本橋駅のパブリックアート《日本橋南詰盛況乃圖》など、話題を呼んだ作品の原画も初公開される。