公開日:2024年9月6日

アーティゾン美術館、2025年の展覧会スケジュールが公開

ジャム・セッションは、山城知佳子×志賀理江子。オーストラリアの女性アボリジナル作家の展示や、ゾフィー・トイバー=アルプ&ジャン・アルプ展、硲伊之助展も

イワニ・スケース えぐられた大地 2017 石橋財団アーティゾン美術館【新収蔵作品】Installation View: QUT Art Museum, Looking Glass: Judy Watson and Yhonnie Scarce. Photograph by Cian Sanders Studios(Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY)

印象派と日本近代洋画を中心に、古代から現代アートまで約3000点のコレクションを所蔵している石橋財団によって運営されているアーティゾン美術館。このたび、2025年に開催する展覧会スケジュールが公開された。展覧会のラインナップを見どころとあわせて紹介する。

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプの創作と協働制作の試み

ゾフィー・トイバー=アルプ 1920
ジャン・アルプ 1926年頃 © VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4762

2025年3月1日〜6月1日は、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展が開催される。テキスタイルデザイナーとしてキャリアを開始し、緻密な幾何学的形態による構成を、絵画や室内空間など領域を横断しながら追求したスイスのアーティスト、ゾフィー・トイバー=アルプ(1889〜1943)と、その夫で、詩人としての顔も持ちつつ、コラージュやレリーフ、彫刻を制作したジャン・アルプ(1886〜1966)。20世紀前半を代表するアーティストカップルをめぐる本展では、それぞれの創作活動を紹介するとともに、互いの制作に与えた影響や協働制作の試みに光を当てる。カップルというパートナーシップのうえにいかなる創作の可能性を見出せるかを再考する内容になるという。

マティスに師事した硲伊之助の展覧会

硲伊之助 室内 1928 硲伊之助美術館
硲伊之助 燈火 1941 硲伊之助美術館

「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展と同時開催(2025年3月1日〜6月1日)されるのが、「硲伊之助展」だ。フュウザン会や二科会で若い頃から注目され、一時は文化学院や東京藝術大学で後進の絵画指導にあたり、晩年には色絵磁器の創作に取り組んだ硲伊之助(1895〜1977)。制作活動のかたわら、西洋美術の紹介にも尽力し、自身が師事したアンリ・マティスの日本初の回顧展の実現に向けた交渉に携わるなど、多岐にわたる活動を行った。本展では、硲の油彩画、版画、磁器など約60点の作品や資料に加え、硲が収集し、アーティゾン美術館に収蔵されている西洋絵画コレクションを展示することで、硲の多様な側面を紹介する。

石橋財団として初めて、女性アボリジナル作家に焦点を当てる

イワニ・スケース えぐられた大地 2017 石橋財団アーティゾン美術館【新収蔵作品】Installation View: QUT Art Museum, Looking Glass: Judy Watson and Yhonnie Scarce. Photograph by Cian Sanders Studios(Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY)

2025年6月24日〜9月21日に開催される「オーストラリア現代美術 彼女たちのアボリジナル・アート」展は、2006年にオーストラリア現代美術の展覧会を開催して以降、継続的に作品を収集してきた石橋財団が、初めて女性アボリジナル作家に焦点を当てる展覧会だ。地域独自の文脈で生まれた作品の再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、あらためて注目を集めているオーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。展覧会では、所蔵作家4名を含む7名と1組の作家の作品を通して、現代の多様な表現を紹介するとともに、オーストラリア先住民美術への深い理解と認知を目指す。

山城知佳子と志賀理江子を迎える「ジャム・セッション」

山城知佳子 チンビン・ウェスタン 家族の表象 2019 シングルチャンネル・ヴィデオ&サウンド・インスタレーション 32分00秒 © Chikako Yamashiro(Courtesy of Yumiko Chiba Associates)
志賀理江子 Sadness 2023、C-typeプリント © Lieko Shiga(Courtesy of the artist)

2025年10月11日〜2026年1月12日は、「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」展が開催。2020年から毎年行われている石橋財団コレクションとアーティストとの共演「ジャム・セッション」の第6回となる本展では、山城知佳子と志賀理江子を迎える。近・現代日本が生み出した矛盾と抑圧、沖縄戦や集中する米軍基地など、生まれ育った土地にある複雑で歪な状況を、ときにユーモアを交えて描き出す山城と、2008年から宮城県を拠点とし、東日本大震災と復興、あるいはそれ以前から作用していた中心と周縁の不均衡な力学のなかに立ち現れる生のあり方に光を当てる志賀。本展では、ふたりの新作を通じて、過去から続く複雑で困難な現実に向き合う作家たちの態度と、創造力と芸術という手法のあり方をコレクション作品のうちにも見出し、紹介する。

なお、石橋財団コレクションを中心とした展示を行う4階の展示室では、コレクションの代表作を取り上げる「コレクション・ハイライト」(2025年3月1日〜6月1日、6月10日〜9月21日)、近年アーティゾン美術館が収蔵した安井曾太郎の《座像》(1929)に焦点を当てる「特集コーナー展示 安井曾太郎」(2025年10月11日〜2026年1月12日)が予定されている。

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