10月19日、現代アートを専門とする国際的メディアArtforumがアーティストやアート関係者らに呼びかけ、民間人への暴力と殺害の停止やパレスチナ解放と即時停戦、ガザへの人道的支援等を求める内容のオープンレターを公開。しかし、このことを受けてArtforum編集長のデイヴィッド・ヴェラスコ(David Velasco)がArforum社を解雇されたことをARTnewsが伝えている。この後、4名の編集者も辞職したこともわかった。
Artforumの公式サイトを見ると、同社はパブリッシャーのダニエル・マコーネル(Danielle McConnell)、アソシエイトパブリッシャーのケイト・コザ(Kate Koza)、そして今回解雇されたヴェラスコがリーダーシップを取って運営してきたことがわかる。
しかし10月26日にArtforum上で発表されたステートメントでは、マコーネルとコザが連名でヴェラスコの行為を批判。ふたりや主要編集者に事前に知らせることなくヴェラスコがサイトとSNSでオープンレターを公開したことに対して、「Artforumの編集プロセスに反するものである」「オープンレターが、非常にデリケートで複雑な地政学的な問題についてArtforumが声明を出していると誤解された」「本誌の外部から発信されたものであるという文脈が欠けていた」として編集上の過失があったことを指摘。さらに「オープンレターが本誌の立場を反映したものとして誤解され、私たちの読者やコミュニティーに大きな失望感・不快感を与えてしまったことを深く反省している」と、Artforumスタッフの総意ではないことを強調している。
『ニューヨーク・タイムズ』誌の取材に対し、ヴェラスコは「後悔はしていない。言論の自由とアーティストの生の声を届けてきた雑誌が、外部の圧力に負けてしまったことがとても残念である」と語っている。
Artforumのオープンレターは公開後、「Artforumやそのスタッフによって作成されたものではない」ことを記した文章が冒頭に掲載されたり、ピーター・ドイグ、ジョーン・ジョナス、カタリーナ・グロッセ、トマス・サラセーノら賛同者の名前が削除されたり、これまで言及されていなかった「10月7日にハマスがイスラエルで起こした1400人への虐殺行為に対する強い嫌悪感」という一文が太字で追加されるなど、様々な調整が行われてきた。同時期には、発行元不明の新たなオープンレターも公開されている。
今回の解雇を受け、アーティストのナン・ゴールディンとニコール・アイゼンマンはArtforumとはもう仕事をしないと語ったほか、ゴールディンはこの状況をこれまで生きてきたなかでもっとも「恐ろしい時代」だと『ニューヨーク・タイムズ』誌に語っている。