尾田栄一郎 『ONE PIECE』 © Eiichiro Oda/Shueisha
アメリカ・カリフォルニア州最大の公立芸術機関である「ファイン・アーツ・ミュージアム・オブ・サンフランシスコ(The Fine Arts Museums of San Francisco)」は、今年9月にアメリカ大陸初となる「Art of MANGA」展を開催する。会場はサンフランシスコのデ・ヤング美術館。マンガという独自の芸術形式に、アメリカ大陸の美術館として初めて焦点を当てる展覧会となる。
2019年にイギリスの大英博物館で開催された「MANGA」展の成功をはじめ、世界でますます人気と注目が高まる日本のマンガ。しかし、アメリカではこれまでごく小規模な展示にとどまり、マンガを総合的なアートとして取り上げた展覧会は開催されてこなかった。今回の「Art of MANGA」展は、アメリカで初めての本格的な試みとなる。
本展では、日本の出版社やプロダクションの垣根を越えた協力のもと、現代日本を代表する人気マンガ家8名による700点以上の原画が展示される。来場者は、マンガの作品世界が持つ吸引力や、その社会的影響について理解を深めるとともに、マンガの魅力をさらに堪能できる貴重な機会となる。
参加作家に荒木飛呂彦、尾田栄一郎、高橋留美子、田亀源五郎、谷口ジロー、 ヤマザキマリ、山下和美、よしながふみが名を連ねる。さらに、赤塚不二夫やちばてつやの作品を通じてマンガの歴史を学ぶコーナーや、「集英社マンガアートヘリテージ」セクションでは田名網敬一の作品も展示される。
ファイン・アート・ミュージアム・オブ・サンフランシスコのディレクター兼CEOのトーマス・P・キャンベルのコメントは以下。
画像によるダイナミックな物語表現であり、世界中で何百万人もの読者を魅了するマンガは、現代のもっとも重要なヴィジュアルメディアのひとつです。サンフランンシスコは長い間、米国における日本との文化交流の入り口であり続けてきました。その場所で「Art of MANGA」展を開催し、マンガというナラティヴアートの芸術性とパワーを紹介しつつ、その伝統を讃えることができ、うれしく思います。
また、本展のキュレーターを務めるニコル・クーリッジ・ルマニエール(イースト・アングリア大学、セインズベリー日本藝術研究所長)は以下のコメントを寄せている。
物語の表現が、文字から画像へとどんどん移行しているのがこの時代の現実です。文字よりもイメージと描線でストーリーを語るマンガは、読者に直感的に内容を理解させ、世界中の人とともに作品を楽しむことを可能にさせます。登場人物とその行方に熱中する読者たちから寄せられるファンレターやSNSコメントを参考に、作家と出版社は、進行中のストーリーを変えたり、新たな漫画を創作したりもする。それこそが、文化の大いなる変革の先駆けというものです。
本展の見どころのひとつは、出版社の垣根を越えた豪華な作家ラインアップと、700点を超える作品の展示だ。日本でも人気の高いシリーズから、『天才バカボン:ねむれないのだ夢の中』(講談社)、『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)、『ONE PIECE』(集英社)、『らんま 1/2』(小学館)、『僕らの色彩』(双葉社)、『孤独のグルメ』(原作︓久住昌之/扶桑社)、『あしたのジョー』(原作︓高森朝雄/講談社)、『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWA)、『大奥』(白泉社)、『ランド』(講談社)などが展示される予定。
ますます世界でアートとしての認知が高まる日本のマンガ。本展は、日本を象徴する芸術としてのマンガを総合的に探求する、貴重な展覧会となりそうだ。
「Art of MANGA」展
会期:9月27日~2026年1月25日
会場:デ・ヤング美術館(アメリカ・サンフランシスコ)
主催:ファイン・アーツ・ミュージアム・オブ・サンフランシスコ
協力:KADOKAWA、講談社、集英社、小学館、新潮社、スマイルカンパニー、ちばてつやプロダクション、白泉社、フジオプロダクション、双葉社、ふらりほか