公開日:2024年11月5日

アジアの熱気を感じることができる場所。過去最大規模で開催された「アートジャカルタ 2024」レポート

インドネシア国内から39件、マレーシア、シンガポール、フィリピンなど東南アジア諸国から34件、計73のギャラリーが出展。コミッションワークや、ギャラリーアーティストをレポート。

会場風景

アジアで唯一東南アジアに特化したアートフェア「アート・ジャカルタ」の2024年版が10月4日〜6日の期間開催された。今年はホールを増設し過去最大規模で開かれ、インドネシアをはじめ東南アジア諸国から73のギャラリーが集結した。昨年に比べ、7%入場者数を増やし活気をさらに高めていた。

会場風景

「アート・ジャカルタ」は協賛企業と地元アーティストのコラボレーションによるコミッションワークが大規模で、毎年見どころである。今年はBibit協賛で、シナンティ A.ヨハンシャー(Cinanti A.Johansjah)と編み手の集団「ラジュト・ケジュト(Rajut Kejut)」によるインスタレーション《Knit by Knit》が展示された。人生と投資どちらにも通じる基本原則「一貫性、持続性、未来への信頼」について考察する内容だった。

シナンティ A.ヨハンシャー(Cinanti A.Johansjah)とラジュト・ケジュト(Rajut Kejut)によるインスタレーション作品《Knit by Knit》

会場中心にはユージン・スタジオの作品シリーズ《White Painting》があり、真っ白なキャンバスに通りがかりの人々が思い思いにキスをして、体験を楽しんでいた。会期終了までに約400人の参加者がいたとのことだった。

ユージン・スタジオ White Painting

MINIが提供するブースでは、バンドゥンのアーティストのアーウィン・ウィンドゥ・プラナタ(Erwin Windu Pranata)が、MINIを組み込んだアッサンブラージュ作品《Ketok Mejik》を制作。カラフルで再利用可能な日用品を使用することで、持続可能性について考えながら、車に内在する陽気さを強調した。

ギャラリーブースで目に止まったのはジャカルタ拠点の「ROH」、東京とシンガポール、上海拠点の「Ota Fine Arts」、クアラルンプール拠点の「A+ WORKS of ART」である。

ROHブース風景
Ota Fine Artsブース風景

とくに「A+ WORKS of ART」のブースは、牢獄の鉄格子が設けられており、人々の目を引いていた。鉄格子の隙間は人が通れないほど狭いところから、ギリギリ人がブースに入り込めるほどの大きさまで間隔が段階的で、これはシンガポールのアーティスト集団「Vertical Submarine」による作品《Leaving Room》だった。本来牢獄には誰も入りたがらないはずだが、こちらのブースには人が興味をそそられ入っては、談笑する奇妙な光景を作り出していた。

A+ WORKS of ART ブース風景

アートフェアでは作品が売れることを優先するため、政治的な作品やコンセプトが強い作品は避けられる傾向にあるが、「アート・ジャカルタ」はそのような傾向をものともせず、また国際的にアートフェアの売り上げが落ちているなか、熱気を失わず力強さを見せ続けているように見えた。

来年2025年の「アート・ジャカルタ」は10月3日から5日まで開催される予定だ。

諸岡なつき

諸岡なつき

もろおか・なつき 「Tokyo Art Beat」マネージャー