2024年春から青森県内5つの美術館・アートセンターによるアートフェス「AOMORI GOKAN アートフェス2024」が初開催される。期間は2024年4月13日〜9月1日。
会場となるのは、青森県立美術館、青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館。
11月6日に都内で記者発表が行われ、参加作家を含む概要が発表された。
2020年より「5館が五感を刺激する―AOMORI GOKAN」という連携プロジェクトを行ってきた5館だが、その発展形として開催される「AOMORI GOKAN アートフェス2024」は各館がプログラムを企画する新しいかたちのアートフェスとなる。
ディレクターは置かず、この地に根差して活動する各館のキュレーターが協働して実施するのが大きな特徴だ。
2024年度のテーマは「つらなりのはらっぱ」。現代美術を扱う5つの館が、訪れることでなにかに出会い、何かが起こる「はらっぱ」のように機能し、それぞれの個性的な活動のつらなりから新たな関係性が紡がれていくようにとの想いが込められているという。
子供や若者を主要な客層のひとつとして想定し、子供や親子を対象とした様々なラーニング・プログラムを5館が連携して開催する。
また工芸、建築、自然などをテーマに周遊コースを設定。青森の多彩な伝統、自然、食文化などを紹介し、国内外からの観光客や県民らにアートを通じた新しい体験を提案する。
実行委員長であり青森県立美術館の杉本康雄館長は「アートを見たくて各施設を回ると青森県を縦横にめぐることになり、結果的に自然や食など観光も楽しめる。それぞれの場を訪れてそこの生活や文化を体験してもらうことで、青森を訪れてよかったと思ってもらえるようにしたい」と語った。
以下、各館の展覧会やプロジェクトを紹介する。
前期:2024年4月13日〜6月23日
後期:2024年7月6日〜9月29日
参加作家:原口典之、吉田克朗ほか
青森県立美術館を設計した青木淳が提唱した「原っぱ」論を援用し、展示室のみならず、コミュニティギャラリーやワークショップエリア、屋外ヤードなども展示やプロジェクトに活用。展示室を含めた諸室をそれぞれの「原っぱ」に見立て、館内外の至るところでアートを発見、鑑賞、体験できる場を設けることで、美術館全体に大きな「つらなり」を生み出していく。
テーマは「かさなりとまじわり」。美術館を構成する特徴的な各空間が「かさなり」、いくつかのコンセプトに沿って作品がインストールされることで、青森の自然と人間の「まじわり」、死んだものと生きているものの「まじわり」、現代社会のありようとこれから未来を切り拓いていく人たちとの「まじわり」の諸相を浮かび上がらせる。
三内丸山遺跡に着想を得た美術館の施設内外を往還しながら、縄文からつらなる長い時間の中で堆積してきた青森の文化芸術のエネルギーを引き出し、豊かな青い森の生態系のように展示空間を連鎖、循環させることで、未来を切り開くための新しい活力を美術館全体に充満させる試みとなる。
参加作家のひとり吉田克朗は、もの派のメンバーとして知られ、青森の三戸にある町立の現代版画研究所の立ち上げに尽力した存在だ。
前期:2024年4月13日〜6月30日
後期:2024年7月13日〜9月29日
参加作家:青野文昭、Jumana Emil Abbound(ジュマナ・エミル・アブード)、岩根愛、是恒さくら、光岡幸一、中嶋幸治、鈴木正治、Jasmine Togo-Brisby(ジャスミン・トーゴ=ブリスビー)、Robin White(ロビン・ホワイト)ほか
国際芸術センター青森は、表現活動を行う人々が全世界から集い、宿泊しながら地域住民や学生らと交流し、滞在制作を行うアートセンター。
本展では、「現在」という意味をもちながら、海流や気流をはじめとして、ある一定の方向に動く水や空気、電流などの変わり続ける流れを示す「current」と、表面や他の流れの下にある目に見え難い流れや暗示を意味する「undercurrent」をキーワードとして、ある場所とかかわり合いながら表現をつむぎ出す国内外のアーティスト、そして青森ゆかりの表現者たちによる作品が集う。前期と後期の出展作家は同じだが、会期半ばで展示替えをし、異なる2つの展覧会を行うことで、一回限りでない場所への働きかけや、変化し続ける「いま」をこの場に取り込むことを試みる。それぞれの表現が発生させる流れや渦のようなものが、出会い交差することで、また新たな流れや渦を無数に生成させていくといった実験的なアプローチを通して、私たちの現在地を問う企画となる。
2024年4月6日〜9月1日
参加作家:蜷川実花 with EiM(Eternity in a Moment)
写真家・映画監督の蜷川実花が、データサイエンティストの宮田裕章、セットデザイナーのEnzo、クリエイティブディレクターの桑名功らと結成したクリエイティブチーム・EiMとの協働により実現する大規模な個展。うつろう時間やながれゆく季節の境界を超える壮大なインスタレーションを発表するほか、蜷川がコロナ禍の弘前をはじめ、日本各地で撮影した桜の写真など、初公開の作品を含む近作により構成する。
2024年4月6日〜9月1日
参加作家:狩野哲郎、佐藤朋子、永沢碧衣
「白神覗見考(しらかみのぞきみこう)」は青森県南西部に位置し、弘前市を含む津軽平野を流れる岩木川の源流の地でもある白神山地をテーマに実施するリサーチ・プロジェクト。狩野哲郎、佐藤朋子、永沢碧衣の3名のアーティストたちが、それぞれの視点で、作品展示をはじめ、ワークショップやトークイベントなどを実施します。古くから人々の生活を支えてきた川の源となる山々に目を向け、そこに息づく動植物や人々の営みの時間が積み重なる景色に触れることで、いつもの風景が異なるものに見えてくるきっかけとなることを目指す。美術館のほか、HIROSAKI ORANDO、ギャラリーまんなかなどが会場となる。
2024年4月13日〜9月1日
参加作家:磯島未来、漆畑幸男、しばやまいぬ、蜂屋雄士、東方悠平
八戸市美術館のコンセプト「出会いと学びのアートファーム」を体現する企画。展覧会やプロジェクト、コミュニケーションを種として、そこに訪れた人々が得る出会いや学びが栄養となり、それぞれの感性や創造力が育まれる。美術館は、その畑(ファーム)として、多様な活動の土壌となり、まちの未来を創造していく。
そんな美術館を象徴する空間「ジャイアントルーム」で、八戸を拠点に活動する5人のアーティストが、来館者と共に作り、楽しむプロジェクトを展開。絵画や版画、写真、ダンスなど、多様なジャンルで日々繰り広げられる活動により、来館者とアーティストがこの場で出会い、関わり合うことでを目指す。
2024年4月13日〜11月17日
参加作家:丹羽海子、䑓原蓉子、永田康祐、アナイス・カレニン
アートフェスのテーマである「はらっぱ」を自然と人間の交わるところととらえ、それらの複雑に絡まる関係性に注目した展覧会。
近年、世界規模で気候変動への危機感が高まり、人間の自然に対する関係を再考することが求められていますが、本展では近代が生み出した自律した理性的な主体としての「人間」を見直し、その成立過程で排除された存在や思考に目を向ける。
日本とアメリカにルーツを持ち、トランスジェンダー女性として生きる在り方を彫刻で表現する丹羽海子、10歳の頃に学校を離れ、研ぎ澄まされた独学の感性で風景を描く䑓原蓉子、品種改良や養殖といった人間のコントロールと動植物の生が交錯する関係を取り上げ、映像や料理の作品を作る永田康祐、ブラジルに植民地時代以前から伝わる知識をもとに、植物と人間の関係性を問い直す作品を制作するアナイス・カレニンなど、多様な視点から自然をとらえるアーティストの表現を紹介する。
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また、2024年4月には青森県立美術館で公開シンポジウムが開催予定。連携のシンボルとなるような作品の設置も検討中だという。
ひとつの県に現代美術を定期的に紹介する美術館や施設が5つもある青森県。豊な自然や独自の文化が根付くその様々な魅力に、アートを通して触れてみてはいかがだろうか。
AOMORI GOKAN アートフェス2024
テーマ:つらなりのはらっぱ
会期:2024 年4月13日〜9月1日
会場および展覧会・プロジェクト名
・青森県立美術館: かさなりとまじわり
・青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC] :currents / undercurrents -いま、めくるめく流れは出会って
・弘前れんが倉庫美術館:蜷川実花展 with EiM:儚なくも煌めく境界、弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考しらかみのぞきみこう」
・八戸市美術館:エンジョイ ! アートファーム !!
・十和田市現代美術館:野良になる
*この他県内各地での連携企画を予定
主催:AOMORI GOKAN アートフェス 2024 実行委員会
[青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館、青森県、青森市、弘前市、八戸市、十和田市、(公社)青森県観光国際交流機構]