彫刻? モニュメント? 工芸? インスタレーション? オブジェ? プロダクト?……
私は、美大に通い大学では立体作品を制作しています。日々行なっている制作に対して、なぜ自分が立体作品を作っているのかが分からなくなってしまったことがあります。その中で読者の方にも、立体作品に興味を持っていただくきっかけや作品の捉え方の提案につながるような記事になればと考え、今回は彫刻の存在に対して危機感を感じ精力的に活動を行なっているグループAGAIN-STを紹介したいと思います。
NADiff a/p/a/r/tでAGAIN-STによる第6回目の「平和の彫刻」という展示が4月23日まで行われています。AGAIN-STは2012年に発足した、彫刻表現をベースとする作家、彫刻を専門領域とする批評家、美術の現場に携わるデザイナーによって構成されているグループです。「彫刻は今なお有効性を持っているのか」という問いを、作品、批評、流通のそれぞれの視座から考察し、現在日本の彫刻が置かれている現状を見つめ直そうと働きかけるため、連続的に開催する展覧会や、トークライブを行なっています。今回の第6回の展示は、各参加作家が特定の場所を想定した公共的かつ恒久的な作品設置プランをマケットやドローイングなどの形で提出するグループ展です。
前回の第5回目となる展覧会は、なんと、紙面上、印刷物の上で行われました(展覧会に合わせて出版された記録集「AGAIN-ST BOOK」に所収)。彫刻は果たして紙面上、印刷物を通じて展開、流通できるのでしょうか。
AGAIN-STメンバーで学芸員の石崎尚さんはAGAIN-STの第5回の展覧会上でこう問うています。「歴史を振り返ればその場所は、まずは宗教建築の中にあり、やがて人々が住来する公共空間の中にも出来て、そして美術館の展示室に移っていった、という大まかな流れはあるだろう。だが、今の我々が生きている21世紀の日本において、それはそう簡単に見つかるのだろうか。」(「AGAIN-ST BOOK」74頁)。彫刻のための場所は果たして必要なのでしょうか。
第6回展に参加し、紙面上で行われた第5回展にも参加している、彫刻家の元木考美さんは「彫刻の存在によって喚起される空間」の為のペーパークラフトと題して作品を提示しています。彫刻といえば、立体作品であることを第一に考えてしまいますが、だからこそ、印刷物上での展覧会でその立体を嫌でも想起させられる元木さんの展示ページは彫刻を展示していると言えるのではないかと思います。
第5回目の展覧会の元木さんの作品を頭の中で想起することができたように感じていることと同じなのではないかと思います。
何が彫刻を鑑賞したことになりうるのかということは、作者自身がそういった作品を彫刻とするかどうかが重要ではありますが、 “鑑賞者側も作品を彫刻として捉えることができるかどうか”ということが、これからの彫刻や立体作品への考え方を広げることになるのではないかと思います。皆さんも何が彫刻として鑑賞可能なのか考えながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。
ウェブサイト:http://www.nadiff.com/?p=5431
[TABインターン] Rieko Yanagisawa: 群馬出身。美大で工芸科に在籍。陶芸を専攻している学生。現代工芸と彫刻の違いは何なのかと疑問を抱きつつ日々制作している。