展覧会「葛飾応為『吉原格子先之図』 ―肉筆画の魅力」が、11月1日〜26日に太田記念美術館で開催される。葛飾応為は江戸末期に女性の浮世絵師として活躍し、葛飾北斎の娘としても知られている。代表作「吉原格子先之図」は、西洋画のような陰影を駆使した描写により、江戸の遊廓・吉原の光と闇を描き出した名作だ。美しくほどこされた色彩やグラデーションなどに、応為の卓越した筆致が感じられるだろう。
太田記念美術館は東京・原宿にある浮世絵専門の美術館で、そのコレクションは約1万5000点に上る。肉筆画でよく描かれるモチーフとして、一人立ちの女性を描いた、いわゆる美人画が挙げられるが、多くの絵師とジャンルを含む太田記念美術館の肉筆画コレクションの中には、美人画だけにとどまらない幅広いテーマで描かれた作品がそろっている。
本展で展示される肉筆画は、浮世絵の中でも版画とは異なり、浮世絵師たちが紙や絹に描いて仕上げた貴重な一点ものだ。そのため肉筆画からは、細緻な描線、美しいグラデーションなど、絵師の生の筆致を知ることができるだろう。
展示会場は、「人を描く」「市井を描く」「風景を描く」「物語を描く」という4つのテーマに分けて作品紹介が行われる。応為の作品のほかにも、葛飾北斎の《羅漢図》や歌川広重の《日光山華厳ノ滝/ 日光山霧降ノ滝/日光山裏見ノ滝》などを始めとして、菱川師宣や喜多川歌麿、葛飾北斎から小林清親に至るまで、浮世絵の歴史を肉筆画でたどることができる。女性の風俗の変遷から諸国の名所の様子、江戸庶民に親しまれた物語まで、様々な視点から肉筆画の魅力を堪能してみてはいかがだろう。