兵庫・西宮市大谷記念美術館では、「戦後西ドイツのグラフィックデザイン」展が10月26日から開催されることが発表された。会期は2025年2月24日まで。
本展は、戦後西ドイツのグラフィックデザインにおける重要な蓄積のひとつ「A5 コレクション・デュッセルドルフ」から、ポスター約130 点、その他冊子、雑誌などグラフィック関係の小品、約250点が紹介される。
また、本展は京都dddギャラリーで10月24日から開催される「アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング」と同時開催。バウハウスをはじめとするモダンデザインの潮流に大きな影響を受けながら、日常を視覚的にかたちづくるデザイン手法によって戦後西ドイツの国家イメージを形成する重要な要素であったグラフィックデザイン。本展は、そのような戦後ドイツのデザインの魅力に迫る貴重な機会となりそうだ。
本展は、グラフィックデザインの構成要素である「幾何学的抽象」「イラストレーション」「写真」「タイポグラフィー」という4つのキーワードを通じて、戦後西ドイツのデザインを辿るような構成となっている。
第1章「幾何学的抽象」では、グラフィックデザインにおける画面の構成や、その画面を構成する線・面・マッスといった幾何学的要素に焦点をあてた展示が行われ、幾何学的抽象を構成する円、矩形、線などの諸要素がいかにポスター全体にリズムを与えているかについて考察をうながすような展示が行われる。
つづく第2章で行われるのは、ビジュアルコミュニケーションにおいて重要な要素である「イラストレーション」に注目した展示だ。ドイツを代表するデザイナー・イラストレーターであるハンス・ヒルマン、ハインツ・エーデルマン、セレスティーノ・ピアッティ、フィシャー= ノスビッシュ、イュルゲン・シュポーンら、才能あふれるデザイナーの描いたシンプルで理知的な作品が紹介される。
第3章で紹介されるのは現代のデザインにおいても重要な構成要素のひとつである「写真」を用いたグラフィックデザインだ。優れた写真をそのまま使うだけでなく、写真の配置や切り取り方に工夫を加え、モンタージュ・コラージュといった技法を用いることによって、グラフィックデザインにおける写真表現が広がりを持っていった様子が感じられるはずだ。
本展の最終章である第4章のテーマは「タイポグラフィ」。イラストレーション、写真がイメージの伝達を行う要素であるのに対して、タイポグラフィは直接的なコミュニケーションの媒体と言える。視認性の高い、ユニバーサルな書体だけでなく、文字そのもので遊ぶかのようなユーモラスな書体や、文字の可能性を示唆するような表現が精力的に行われていたのも戦後西ドイツのデザインの特徴だ。
世界でもっとも古い歴史を持つセーリング・フェスティバル「キールウィーク」、1972 年のミュンヘンオリンピック、カッセルで5 年に1度開催される現代美術展「ドクメンタ」などスポーツや文化における国家的イベントのイメージを形成するうえでも、大きな役割を果たした戦後西ドイツのグラフィックデザイン。そのようなデザインの様相を総観できるのにぴったりな展覧会を訪れに、ぜひ兵庫・京都へと足を運んでみてほしい。