プラダ・MTV・ナイキ・MoMA・MALIN+GOETZ・グッゲンハイム美術館など多彩な領域に渡ってデザインを手がけるニューヨークのデザイン事務所「2×4(ツーバイフォー)」の、日本発となる展覧会がEYE OF GYRE(表参道)にて開催されています。
ギャラリー入り口から入って左手の一番上から始まって、ぐるっと一周して右手一番下まで。1000のイメージが並べられており、デザインの初期のアイディア段階から、スケッチ、デザイン戦略、ビジュアルによるクライアントへの提案、プロトタイプ、図面、製作工程、インスタレーション……そして最後にいよいよ最終デザインとして形づくられるに至るまで、デザインのプロセスを順番に追っていける構成になっています。
デザインとは、常に、見る事ができたり触れることができたりと、物理的な影響を及ぼすもの。しかし、デザイナーが報酬を受けるのは、デザイナーが何かを創造する-成果物-のみのためだけではありません。「アイディアを生む事」や「感情を生み出す効果」にあります。デザイナーの生み出すこの効果はデザインにおける全てのプロセスで起こりえるんです。
完成する事もあれば、しない事もあります。例えば大きなプロジェクト、完成する事が決してないようなものの場合は、何年にも渡って、いくつものプロジェクトをまたいで引き継がれてゆく……永続性や、絶えず努力する勤勉性、絶対あきらめない挑戦を要求しているのはプロジェクトそのものです。それが我々の事務所における“仕事”、そして“人生”なのです。
15年の歴史を1000のイメージでまとめた2×4初の書籍(it is what it is)は、不鮮明なストーリーをイメージによって伝えようという試みです。規模や時代など、それぞれ全く異なったありとあらゆるプロジェクトを重ね合わせて、デザインを作り出すための最初のコンタクトから、デザインが世の中に送り出されるまでを、ビジュアルによって追っています。
この書籍、ならびに展覧会では、ブラッシュアップされた完成品と、製作途中の未完成のものを分け隔てることなく、完全なものとしています。あらゆるプロジェクトのビジュアルを不規則に並べてみることで、我々の事務所の人間が休む事なくクライアントの要望に応えるべく流れ続ける中、また、ある日突然理由も無くなくなってしまうプロジェクトもある中「日々のデザインをする」という混沌としたプロセスの中で、私たち自身の頭の中を、直感的に支配している考え方がどのようなものなのかを探ろうとする試みでもあります。
私たちの「仕事そのもの」についてというよりも、「どのようにしてそれらが作り上げられていくのか」について。つかの間のものから、永遠に続くものまで。あるものは完成し、あるものは途中で終わってしまい、あるものは成功し、あるものは失敗しています。スケッチやモデル、プロトタイプ、コラージュ、アニメーション、ドローイングや現場の写真……私たちが日々作り出しているもの全てが納められています。どのように仕事をし、どのように考え、そして考えているものがどのようにして作り出されているのか、という一連の流れ、ストーリーが伝わればと思っています。
デザインに関わる仕事をしている方はもちろんのこと、そうでない方にとっても……完成されたものだけでなく、デザインする上での市場調査や情報収集の段階、また初期のアイディアや製作過程までもを垣間見ることができる、貴重なエキシビジョンだと思いました。