26回目を迎える岡本太郎現代芸術賞、通称「TARO賞」。同賞は、1996年に亡くなった岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問うもの。芸術の新しい可能性を探る「ベラボー」な作品、作家を顕彰してきた。今年は595点の作品が応募され、23名が入選を果たした。審査員は椹木野衣、土方明司、平野暁臣、山下裕二、和多利浩一 。
グランプリに相当する岡本太郎賞、岡本敏子賞だが、今年は該当者なし。岡本太郎記念館館長の平野暁臣は「受賞者がいないからといって、みなさんの作品の価値が貶められたわけではない。数百のなかから勝ち残り、入選したことは事実である。他方で、上位2賞にいたるほどではなかったことも事実だ。このふたつの事実に真摯に向き合って、これからも制作に邁進していただきたい。そしてぜひとも、再挑戦をしていただきたい」とコメント。
審査員の椹木野衣は「該当者がいないことは珍しいことではない。特別賞も入選もあくまで出発点であることを忘れずに、今後の活動につなげてほしい」と作家に向けて語った。
上記2賞に続く特別賞は、4名の作家が獲得。以下では受賞者の作品を、作家のコメントを交えつつ紹介しよう。
足立篤史は《OHKA》と名付けられた巨大な彫刻作品を発表。タイトルは第二次大戦中に特攻専用の航空機として開発された「桜花」であり、その表面を覆っているのは、昭和19、20年に発行された新聞紙だ。「過去を振り返り、何が起きたのか、何をしてきたのかを直視しなくてはならない」と語る足立は「本作を見ることにより、何かを考えるきっかけになってもらえれば幸いである」とコメントした。
過去2回TARO賞に出品し、入選と特別賞を獲得している澤井昌平。今年の作品「風景|Landscape」は、澤井が日々描いているドローイングを集めたコラージュ。コロナ禍以降は1日1枚の絵を完成させることを自身に課していたというが、同時にそれは「今日も実りのある1日だったと(自分に)思い込ませたかったのかもしれない」と澤井は話す。作品を見ていくと、日々の生活とタブロー上の空想が交錯しているような、不穏な気配が感じられるだろう。
関本幸治は《1980年のアイドルのノーバン始球式》という作品を発表。関本は1980年のリサーチをもとに、集めた資料やテキストなどを箱型のインスタレーションとしてまとめあげた。とはいえ、関本が実際に出品したのはこのインスタレーションではなく、それを撮影した写真だという。壁面には何が貼られているのか、半密室に何が隠されているのか、会場でインスタレーションの細部を詳しく鑑賞してみてほしい。
レモコ-レイコ《君の待つところへ》は、陽気な「お話し」を絵画で表現した作品。壁面には物語のワンシーンが描かれ、手前にはラクダや龍が吊るされている。作家は「主人公のおかっぱの女の子はどこ?友達の猫は何匹?鳥は何羽?指揮者はどこ?カップ麺食べたの誰?さあ、あなたも一緒にこの旅をおもいっきり楽しみましょう!」とコメントした。
そのほかの入選作家は、池田はなえ、牛尾篤、大洲大作、奥野宏、空箱二郎 、川上一彦、川端健太、柴田英昭、高田哲男、千原真実、都築崇広、ながさわたかひろ、西除闇、NISHINO HARUKA、平向功一、Hexagon artist®、宮本佳美、山田愛、山田優アントニ。
入賞者の作品は、川崎市岡本太郎美術館にて4月16日まで公開される。会期中には、常設展「岡本太郎とにらめっこ」 も開催されており、合わせてチェックしてみてはいかがだろうか。