施設の建築は安藤忠雄。三宅一生、佐藤卓、深澤直人という各方面で世界的に活躍している3人がディレクターを努める、世界でも数少ないデザインに特化した施設ということで、国内だけでなく世界からも注目を集めている。今回プレオープニングイベントとしてディレクターズトークがあるというので、謎のベールにつつまれている21_21 DESIGN SIGHTの様子を探りに出かけた。
今回のトークタイトルは「デザイン施設のデザインを考える」。21_21のアソシエイトディレクターである川上典子氏の司会のもと、21_21ディレクターの一人であるデザイナーの佐藤卓氏、ヴィジュアルコミュニケーションチームのアクシスの宮崎光弘氏、イメージソースのトム・ヴィンセント氏の3人が、21_21の準備段階での仕事を見せてくれた。
キックオフは佐藤卓氏。佐藤氏は施設のコンセプトにかかわるネーミング、マークロゴのデザイン、アプリケーションを披露してくれた。欧米では20/20を視力とかけてパーフェクトサイトということからワークがスタート。21世紀という時代性、「サイト」という言葉から連想される2つの意味: デザインに必要な洞察力「見る(sight)」と、デザインを発信していく場所「場所(site)」からネーミング、デザインが展開され、最終的に日常的に日本の町でよくみかける住所表記板のような「プロダクトマークロゴ」へ発展した。はじめに三宅一生氏から「ミュージアムではない、ちゃんとしたデザインの施設を日本につくりたい」と聞かされたときは自分に何ができるか分からなかったが、施設自体が前例のない全く新しいものなのだから手探りでいいのだと、21_21のプロジェクトを楽しんでいるという。
アクシスの宮崎光弘氏はグラフィックスを担当。21_21の広報ツールの裏話、建物のサインデザインの考え方などを話してくれた。21_21の定例会の現場はとても開放的で刺激的だという宮崎氏。21_21では日常のデザインを考える場所にしていきたいという。
イメージソースのトム・ヴィンセント氏はウエブを担当。21_21のウエブ編集にあたり、今チームのみんなが実際に行っているディスカッションや考えていることをそのまま伝えていく場にすれば?と、ディレクター対談の企画や内容を文字やポッドキャストで公開したり、通常、神経質なくらい使用規定が定められているマークロゴを、型破りにも誰もがダウンロードできるようにして、フリッカーで誰もがそのマークロゴをとり入れた写真をアップし公開できる、というような遊びの場をつくっている。保守的に陥りやすいデザインの考え方や手法に対し、いつも壊す役割をしているというトム氏は21_21では「楽しいこと」と「サプライズ」を真剣にやり続けてほしい、という。
こうなってくるといやでも期待が高まるのが21_21のコンテンツである。来年3月の開館にむけて、どのようなエキジビションやアクティビティが計画されているのか、あるいはどんなことが21_21で試されようとされているのか、是非とも聞いてみたかったのだが、今回はその中身にふれられなかったことが残念。しかしまだごく一部にしか流通していない「デザイン」という考え方、社会的役割、遊び方を広める役割を担い、私たちをどんどん巻き込んで、新しい問いと驚きを提案しつづける21_21 DESIGN SIGHTの動向は、これからますます目が離せなくなるだろう。
Chihiro Murakami
Chihiro Murakami