2024年、Tokyo Art Beatは設立20周年を迎えます。この記念すべき年と、これまで/これからのアートシーンを祝福すべく、ユーザーの皆さんから「ベスト展覧会」を募るアワード企画とオンラインイベント、そして特集記事が進行中。
シリーズ「20年間のベスト展覧会」では、アートやカルチャーシーンで活躍する方々にTABがスタートした2004年から24年6月までに開幕した展覧会のなかで、記憶に残るものを1〜3点教えてもらいます。極私的な思い出から、現在の仕事につながる経験まで……展覧会にまつわるエピソードとともにお届けします。【Tokyo Art Beat】
「大震災の惨状や原発事故による深刻な影響を受けている多くの方々の心情等に配慮」して中止となった同展では、原爆に関する絵画、写真、漫画など約600点が展示されるはずだった。原爆投下から80年を目前に、開催されなかった同展の内容を夢想しながら、いまだに思いをめぐらせている。
新型コロナウイルスの感染拡大防止により中止となった展覧会は数多くあるが、なかでも残念に思うのが札幌国際芸術祭2020だ。招聘されていたことを差し引いても、札幌国際芸術祭において初めてタイトルとテーマにアイヌ語を併記したことは画期的である。日本国内のセトラーコロニアリズム(入植者植民地主義)についての議論を深める契機ともなり得ただろう。
同展で高嶺格《木村さん》の展示が取りやめとなり、展示予定だった場所に掲示されたのは「高嶺格氏の作品「木村さん」については、本展にふさわしい作品として公開の努力をしてまいりましたが、現在の日本では、上映が法に触れる恐れがあると判断しましたので中止いたします」という、当時の横浜美術館長・雪山行二の言葉だった。美術展覧会とはかように「現在の日本」の映し鏡となっている。20年後のいま、「現在の日本」はどうあるか。同展の対応を振り返りながら、この国の法と民意について、考え続けたい。
たんなるベスト企画ではなく、Tokyo Art Beat 20周年特集に寄せて、という趣旨でしたので、あえて開催されなかった(作品の展示中止も含む)展覧会のベスト3を考えました。アンケートの対象は、「日本国内で開催された展覧会・企画展・芸術祭」でしたが、私の問い合わせに対して、未開催でも可としてくださった野路さんにお礼申し上げます。開催されなかった展覧会が開催されていたら……と思いをめぐらせることは、決して後ろ向きな「もしも」にしがみつくことでなく、過去を点検・吟味することで、いま/現在とこれから/未来の可能性を想像することだと考えます。Tokyo Art Beatにも様々な「もしも」があり、選択があり、ゆえにいまがあるわけですから、様々な可能性を顧みることこそ周年記念企画にふさわしいのではないかと、そう考える次第です。
*「Tokyo Art Beat」20周年を記念するアワード企画と特集を実施! ユーザーみんなで20年間の「ベスト展覧会」を選ぼう。
詳細は以下をご覧ください。読者の皆さんの投票をお待ちしています!
小田原のどか
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