東京・立川のPLAY! MUSEUMにて「クマのプーさん」展が開催されている。会期は10月2日まで。10月8日〜11月27日には名古屋市美術館へ巡回予定だ。プロデューサーは草刈大介、展示企画・デザインは齋藤名穂、グラフィックデザインは田部井美奈、映像インスタレーションは岡本香音が手がける。
「クマのプーさん」というと、アニメを見たことはあるものの、その起源については知らない人も多いのではないだろうか。始まりは1926年、A・A・ミルンが発表した児童小説『クマのプーさん(Winnie-the-Pooh)』で、28年には続編となる『プー横丁にたった家(The House at Pooh Corner)』が刊行。シリーズとしての「クマのプーさん」はこの2作に加え、前後に発表された2つの童謡集『クリストファーロビンのうた(When We Were Very Young、1924年)』『クマのプーさんとぼく(Now We Are Six、1927年)』の計4作で構成されており、いずれもE・H・シェパードが挿絵を手がけている。
本展の開催にあたって、PLAY! プロデューサーの草刈大介は「どうしてこんなにクマのプーさんは愛されているのか。作品の歴史をひもとき、現代からまなざすことを念頭において企画した」と語る。プーさんの知られざる物語を見ていこう。
PLAY! MUSEUMならではの低い入口をくぐると、「プーA to Z: All about Winnie-the Pooh」のコーナーが。ここでは知ってるようで知らないクマのプーさんに関する豆知識を、アルファベットごとのキーワードをもとに解説。たとえば、Cの「Christopher Robin(クリストファー・ロビン)」はプーさんの物語に登場する人間の少年であり、じつは作者・ミルンの息子と同じ名前。森の仲間たちの面倒を見るロビンはプーさんの盟友と言っても過言ではないだろう。Bは「Bear of Very Little Brain,a(ちっぽけな脳みそのクマ)」。プーさんは自身のことをたびたび“I am a Bear of No Brain at all(脳みそのまったくないクマ=とっても頭の悪いクマ)”と言っており、その考えのなさが様々な出来事を引き起こし、物語を面白くしている。ほかにも、Mは作者のミルン(「Milne, A.A.」)、Dはプーさんの作った歌「Dicsovering the hums of Pooh(はっキンしようプーの鼻歌)」など、関係者や作品の逸話を知ることができる。
うず巻き状の廊下を過ぎると広がる「プーとあるく」のコーナーでは、貴重な原画が多数公開される。1920年代に初めて刊行された『クマのプーさん』『プー横丁にたった家』をきっかけにたちまち人気になった「クマのプーさん」シリーズ。その人気は数十年経っても途絶えることはなく、1950〜60年代にアメリカのダットン社から合本版『クマのプーさん プー横丁にたった家』と抜粋集『絵本 クマのプーさん』が出版されることになった。本展では、ダットン社のシリーズ新装版のためにシェパードが描いた原画を、およそ100点公開。原画と合わせて、一部には物語のテキストが展示されているところもある。
「プーとあるく」と同じ展示空間には「クリストファー・ロビンとうたう」のコーナーも。ロビンが主役の作品『クリストファー・ロビンのうた』と『クマのプーさんとぼく』に挿入された水彩画が展示されている。水彩画の合間には詩も展示されているので合わせて味わってほしい。
「アッシュダウンの森」のコーナーは物語の舞台となったイングランド南部の森を体感できる映像インスタレーションが展開されている。アッシュダウンはシリーズの作者・ミルンにとって、幼いころに父や兄とともに旅行をした思い出の場所。映像を担当した岡本香音が実際にアッシュダウンの森に行って撮影した映像を複数の薄幕に投影し、幻想的な世界が演出されている。
本展に合わせて、上階のPLAY! PARKでは遊具がアップデート。吊るされた布で自在に遊べる「Let's! PLAY! NUNO!」のコーナーでは「ハチミツがいっぱい」と題され、プーさんが大好きなハチミツをイメージしたカラーの布が登場。ほかにも、クリストファー・ロビンのように長靴を履いて傘で遊べる「楽しい雨の日」などもあり、プーさんを読んだことがある子供たちはより楽しめるはずだ。
映画や絵本を通じて、多くの人が親しんできたであろう「クマのプーさん」。休日や夏休みのお出かけに訪れてみてはいかがだろうか。