アーティゾン美術館で「ダムタイプ|2022: remap」が2月25日~5月14日に開催される。担当学芸員は同館の内海潤也、平間理香。
2022年に開催された第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(主催:国際交流基金)の日本館展示に選出されたダムタイプ。本展はその帰国展として、同地で発表された《2022》を再構成のうえ《2022: remap》として展示する。
アーティゾン美術館を運営する公益財団法人石橋財団が、近年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館展示への支援を行っていることから、2020年の開館を機に帰国展を開催するようになり、今回で2度目となる。
ダムタイプは1984年、京都市立芸術大学の学生を中心に結成された日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在。映像、音、機械装置、空間、パフォーマンスといった様々な要素を組み合わせ、身体とテクノロジーの関係に問いを投げかける作品を制作してきた。
ダムタイプのメンバーは流動的だが、本作のプロジェクトメンバーは、高谷史郎、坂本龍一、古舘健、濱哲史、白木良、南琢也、原摩利彦、泊博雅、空里香、高谷桜子。
結成時からのメンバーである高谷が個人の活動において以前から協働していた音楽家の坂本龍一が、本作では新たなメンバーとして加わった。
ヴェネチア・ビエンナーレの日本館は2階構造だが、その上階・下階にあたる2つの空間を、アーティゾン美術館では1フロアに並べて併置。2つの空間は通路でつながっている。
最初の部屋に入ると、東・西・南・北の方角に4台の高速回転する鏡が置かれ、そこにレーザーを反射させることで、壁にテキストが投影されている。またスピーカーからはかすかな声も流れており、これらの言葉はシンプルな問いを鑑賞者に投げかける。
「地球とは何ですか?」「大陸はいくつありますか?」「山とは何ですか?」「帝国を統治するのは誰ですか?」「一番北にある国はどこですか?」……。
これらの言葉は、1850年代のアメリカの地理の教科書から引用したものだ。
本作の狙いは、「ポスト・トゥルース」時代におけるコミュニケーションの方法や世界を知覚する方法について思考を促すというもの。新型コロナウイルスのパンデミックを経験し、ソーシャルメディアが一般化したいま、現在ほど科学技術が進歩していない時代の人々の「世界の把握の仕方」を通して、どんなことが考えられるだろうか。
また各部屋のサイズは、日本館から90%に縮小されている。というのも、四方の壁で囲まれた展示空間の方位を、日本館と同様の方位に合わせて設営するために、このような工夫が必要だったからだという。
「作品がとてもサイトスペシフィックで、展示する空間の方位とその関係性とが組み込まれたものだった。どうしてもそれを再現しないと作品として成立しない」と高谷史郎はプレス内覧会で説明。
さらに「壮大なコラボーレーションでできた作品」だと語る。
「今回はアーティゾン美術館や、様々なアーティストとのコラボレーションでできたと言える。メンバーとして坂本龍一さんに加わってもらい、坂本さんが世界中のアーティストに呼びかけて、16ヶ所で採取されたフィールドレコーディングの音を使っている。本作は壮大なコラボレーションの中でできた作品。サウンドインスタレーションでもあり、ヴィジュアルもあり、時間を使ってゆっくり滞在し、体験してもらえるとありがたい」(高谷)。
なお、アーティゾン美術館では同期間に「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」展も開催。「肖像画のひとコマ ―絵や彫刻の人になってみよう」、「風景画への旅 ―描かれた景色に浸ってみよう」、「印象派の日常空間 ―近代都市パリに行ってみよう」という3つのセクションを通して、ピカソや印象派の画家たちをはじめとする傑作を楽しむことができる。こちらも合わせて足を運んではいかがだろうか。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)