東京・世田谷の地で、1992年の開館から長らく愛されてきた静嘉堂文庫美術館。その展示ギャラリーが、2022年に東京・丸の内の重要文化財、明治生命館1階に移転・オープンする。
移転後の美術館施設や、開館記念展覧会についての詳細が発表された。
2022年、静嘉堂は創設130周年・美術館開館30周年を迎える。そんな節目の年に新たなスタートを切る静嘉堂文庫美術館 展示ギャラリーは、展示面積が世田谷の1.5倍。ガラス天井の広場(ホワイエ)をぐるりと囲むように4つの展示室が配され、展示ケースと照明設備も一新。装いを新たに、国宝・重要文化財を多数含むコレクションで、観覧者を出迎える。
開館記念展覧会「静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念 響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき(仮)」は、2022年10月1日〜12月18日に開催予定。
国宝《曜変天目(稲葉天目)》はもちろん、所蔵する7件の国宝すべてが丸の内に集結する。茶道具、琳派、刀剣、中国書画と工芸などの各ジャンルから、静嘉堂を代表する名宝が並ぶ(前後期展示替えあり)。
また23年1月からは、卯年を彩る新春にふさわしい作品や例年、多くの鑑賞者に親しまれてきたお雛様の展示を行うという。
展示ギャラリーが移設される明治生命館は、かつて同地にあった「三菱二号館」(1895年竣工)を建て替え、1934年に竣工。古典主義様式の傑作として高く評価され、1997 年に昭和期の建造物としては初めて、国の重要文化財に指定された。
意匠設計は東京美術学校(現 東京藝術大学)教授で、同じく重要文化財となった大阪市中央公会堂やニコライ堂修復なども手がけた岡田信一郎(1883〜1932)と、弟の岡田捷五郎(1894〜1976)。
明治生命館の竣工年は、奇しくも、創設者・岩﨑彌之助(1851〜1908、三菱第二代社長)から静嘉堂を受け継いだ息子の岩﨑小彌太(1879〜1945、三菱第四代社長)が、《曜変天目》を購入した年に当たる。
この父子2代によるコレクションは、私立美術館の中でも屈指の質と量を誇るものだ。
新天地で静嘉堂の歴史や収蔵品がどのように次世代へ継承され、新たな発展を見せるのか、期待が高まる。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)