岡本太郎の遺志を引き継ぎ、次世代を担う挑戦的なアーティストを奨励してきた岡本太郎現代芸術賞が今年も発表された。18回を迎える今回は、672点の応募のうち、19歳から53歳まで幅広い世代の27組が入選。グランプリとなる太郎賞には、焼き芋を路肩で売り歩く「デコ車」を制作したアーティストYotta(ヨタ)の《金時(きんとき)》が選ばれた。
石焼き芋の車販売といえば、子どもの頃は目にした人も多いだろうが、今の若者はあまり知らないかもしれない。元々はチャルメラの響く屋台ラーメン家と同様、戦後復興時における食糧事情から自然発生的に生まれた存在でもある。作者Yottaは、公共の道路に調理可能な店舗空間を構えてしまうというこの境界線に目を向け、移動式のパブリックアートとして展開。それのみならず、一心に焼き芋のおいしさを探求し、作者曰く「イモと薪の火と鉄(とステンレス)の釜と小石そして時間の奇妙で複雑な関係」を独自に編み出した。
審査員の椹木野衣からは、「とかくこの手のプロジェクトはコンセプトが先立ちがちだ。が、焼き芋に掛けた彼らの探究心は本物だ。その味の 極上さと来たら! 美と力と味と道が合体した本作はまさに岡本太郎賞の名に値する。文句無しの全員一致。」と評を寄せている。
また、岡本敏子賞には久松知子の《レペゼン 日本の美術》が選ばれた。日本の近現代美術史を探求し、様々な名画のモチーフを一枚の巨大キャンバスに収めた作品。「画中画の選択や細かいモティーフの道具立ても周到に考えられて、近代化という概念、美術をめぐる制度の嘘臭さをグサリと突く姿勢は、まさに岡本太郎の精神を継承するものである。」(審査員・山下裕二)と評された。
特別賞
江頭誠《神宮寺宮型八棟造》
藤村祥馬《どれいちゃん号》
佐野友紀《アウラの逆襲》
村井祐希《<Land scape -TOMIOKA>》
審査員
椹木野衣 / 美術批評家、多摩美術大学教授
平野暁臣 / 空間メディアプロデューサー、岡本太郎記念館館長
北條秀衛 / 川崎市岡本太郎美術館館長
山下裕二 / 美術史家、明治学院大学教授
和多利浩一 / ワタリウム美術館キュレーター
■「第18回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」展
会期:2015年2月3日(火)〜2015年4月12日(日)
会場:川崎市岡本太郎美術館・企画展示室
公式ウェブサイト
Text: Arina Tsukada