エスパス ルイ・ヴィトン東京では、多作のフランス人アーティスト、ピエール・ユイグの展覧会シリーズ第二弾となる『Pierre Huyghe - Part II』展を開催いたします。本展覧会はフォンダシオン ルイ・ヴィトンがキュレーションを担う『Hors-les-murs (壁を越えて)』プロジェクトの一環として企画されました。『Hors-les-murs』プロジェクトは、これまでに公開されてこなかったフォンダシオンの所蔵品をミュンヘン、ヴェネツィア、北京、東京のエスパス ルイ・ヴィトンにて紹介することで、国際的なプロジェクトを実現し、より多くの人々に開かれた活動を展開していきます。
1990年代初頭以来、ピエール・ユイグは新たな手法による創造と展示の見せ方を考案し続けてきました。彼の作品は、「ライブ」のシチュエーション、フィルム、オブジェクト、写真、素描といったさまざまな制作媒体を用いて、現実とフィクションとの境界を探ります。ユイグは、科学やSF、文学、哲学、考古学、映画、音楽、建築、仕事と遊びの関係といった大衆文化から学究的なものまで、現代社会特有の幅広い文化的テーマを扱っています。また、これらのアプローチはしばしば、他のアーティストやミュージシャン、建築家、科学者などとのコラボレーションという形で実現しています。
『Pierre Huyghe - Part II』では、フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションからピエール・ユイグによる『A Journey That Wasn’t』(2005年)と『Creature』(2005-2011年)の2作品をご紹介します。フォンダシオンでは『Les Grands Ensembles』(1994-2001年)、『Silent Score』(1997年)、『L’Expédition Scintillante Acte 2』 (2002年)、『Meditation Hall, The Land, Model 』(2003-2008年)、『Streamside Day』(2003年)、『I do not own 4′33′′』(2006年)、『The Host and the Cloud』(2009-2010年)、『Untilled (Liegender Frauenakt)』(2012年)、『A Way in Untilled(未耕作地の場景)』(2012年)、『Untitled (Human Mask)』(2014年)、『Cambrian Explosion 10』(2014年)等数多くのユイグの作品を所蔵していますが、本エキシビションでは、アーティストとフォンダシオンの綿密な協力により選び抜かれたこの2作品の紹介が実現しました。
国際的シーンの主要な存在であるピエール・ユイグは、自身の展示やそれに対する賛美を通して、また動物と人間の体を登場させることによって、彼自身のアイデンティティーを感じようとする激しい探求を具体化します。2014年10月のオープニング・エキシビションにてユイグの作品を紹介したように、フォンダシオン ルイ・ヴィトンは彼の活動にとりわけ深い関わりを持つこととなりました。
『A Journey That Wasn’t』と『Creature』は、2005年から始まったプロジェクトの中で、2つの異なる制作過程から生まれた作品です。ピエール・ユイグは、地球温暖化により、氷冠が溶けることで地図に無い島が現れ、野生動物の変異の加速を引き起こしている南極大陸への探検旅行を試みました。アーティストと科学者で構成された探検隊と共に、ピエール・ユイグは、かつてジャン=ルイ・エティエンヌが所有していた帆船、タラ号で航海し、誰も姿を見たことのないアルビノのペンギンが1羽生息していると言われる島を探します。こうした島のうちの1つに上陸した後、探検隊はある興味深い機械を披露します。それは島の地形を、動物が自分たちの縄張りを知らせるために使う音声記号や視覚記号に似た、光と音の複雑なシークエンスに変換することができるよう特別に製作された機械でした。それらを書き起こした楽譜から生まれた楽曲は、ニューヨークのセントラルパークにあるウォールマン・リンクで開催された、パブリックイベントの際に交響楽団によって演奏され、観客が実際に島を「聴く」ことを可能にさせました。
展覧会の通常の形式に疑問を呈し、表現という手法を用いることなく、どこか他の場所から状況を引き起こし現実とフィクションの境界線を探る、ピエール・ユイグならではの方法です。
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