公開日:2023年6月13日

2024年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館に毛利悠子が選出。キュレーターはイ・スッキョン

第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展は2024年4月20日〜11月24日に開催

第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示に関する記者会見。左から、柄博子(国際交流基金 理事)、イ・スッキョン(キュレーター)、毛利悠子(作家)、建畠晢(国際展事業委員会委員長)

日本館代表に毛利悠子

6月12日国際交流基金にて、第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示に関する記者発表会が行われ、日本館展示の作家・キュレーター及び展示プランの概要が発表された。本展会期は2024年4月20日〜11月24日

日本館の展示作家に選出されたのは、毛利悠子。またキュレーターはイ・スッキョン(テートモダン シニアキュレーター、第14回光州ビエンナーレ アーティスティック・ディレクター)が務める。なお、日本館キュレーターを外国人が担当するのは初めて。

毛利悠子は1980年生まれの美術家。環境などの諸条件によって変化していく「事象」にフォーカスするインスタレーションや彫刻を制作。第14回光州ビエンナーレ(2022)、第23回シドニー・ビエンナーレ(2023)など国内外の展覧会に参加し、高い評価を得ている。

毛利悠子 I/O 2011–23 「第14回光州ビエンナーレ」展示風景 Courtesy the artist, Project Fulfill Art Space, Taipei, mother’s tankstation limited, Dublin/London and Yutaka Kikutake Gallery, Tokyo Commissioned by the Gwangju Biennale 写真:久家靖秀
毛利悠子 Decomposition 2022 Courtesy the artist, Project Fulfill Art Space, Taipei and mother’s tankstation limited, Dublin/London and Yutaka Kikutake Gallery, Tokyo 写真:久家靖秀

今回の作家選考について

国際交流基金から委嘱された6名の国際展示事業委員会が、国内外の24名の推薦委員からノミネートされた複数の作家の推薦リストをもとに2回にわたる選考会議を開催。1回目の選考会議では5名まで候補者を絞り、各者に展示プランの提出を依頼した。

2回目では、時期的に提出が難しかった1名を除いた4名の展示プランをもとに検討を行い、最終的には大多数の支持で毛利を選定。

作家が選定されたのち、毛利の意向を踏まえてキュレーターにイが指名された。

国際展事業委員会:
片岡真実、建畠晢、野村しのぶ、松本透、南雄介、鷲田めるろ

最終候補作家:
風間サチコ、鴻池朋子、志賀理江子、毛利悠子、百瀬文
*志賀は選考期間がほかの展示の開幕直前と重なり、日本館展示の検討が難しかったため選考を辞退

会見に登壇した建畠は、選考で重視された点として、「作家としてアイデンティティを十分に備えているか、国際的なコンテクストのなかで位置付けられるか、日本館という特殊な展示空間の効果を発揮できるか、プラン通りの展示の実現性」などが考慮されたという。

また毛利に関しては、「植物という生命体とテクノロジーとが一体化された作品などに、エコロジーや生態系といった今日的問題意識」への深い洞察があると評価されたという。

「水」への関心

毛利は会見で、自身の作品と「水」というテーマについて説明。2009年から撮り続けてきた「モレモレ東京」シリーズは、駅構内の水漏れに対し係員らが応急処置を施した姿に着想を得たものだ。

毛利悠子 モレモレ東京 2011–21 Courtesy the artist, Project Fulfill Art Space, Taipei and mother’s tankstation limited, Dublin/London

関心の射程は日常的な風景から、より広い世界的状況にまで及ぶとし、近年はビエンナーレの舞台となるヴェネチアで度重なる水害が起きていることや、環境活動団体ジャスト・ストップ・オイルがゴッホらの美術作品を攻撃しながら気候危機について訴えを起こしていることにも言及。また台風被害によって自身の倉庫も水害に遭い、日産アートアワードでの受賞作も被災し、廃棄処分になってしまったというエピソードも語った。

さらに今回キュレーターにイを指名するうえでも、「水」への関心が関係していると説明。イがアーティスティック・ディレクターを勤めた第14回光州ビエンナーレのテーマは「soft and weak like water」であり、水のイメージがもつ柔らかさや力、流動性といったものが重視されたという。

イは毛利が国際的な舞台で評価される優れた作家であるとし、「この世界についてともに考え、再構築していく」展示を目指すと語った。

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