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「Stone Letter Project #6 Lost in Translation」

名古屋芸術大学 アート&デザインセンター
終了しました

アーティスト

Lighter but Heavier(片山浩、衣川泰典、坂井淳二、田中栄子)
1798年にリトグラフを発明したアロイス ・ ゼネフェルダーはその後1818年には『石版全書』を出版し、石版印刷術を世界に広めることに尽力しました。その理由は彼のビジネス的観点からでもあるのですが、それ故に技術を正確に伝えることに努めたといえます。ゼネフェルダーの試行錯誤の末に発明された石版印刷には、正確な技術を記した『石版全書』という原典があることで技術が正しく伝播し、のちに産業印刷の主軸となりました。日本に 本格的に石版印刷術が広がった明治時代にも多くの技法書、石版印刷業指南書が出版されています。それをもとに職人から職人へと技篇が伝承されたことが容易に想像ができます。産業印刷として発達した石版印刷はその後も多くの技法が開発され、およそ110~70年ほど前に金属版を使用したオフセット印刷に移行し現代に至ります。石版印刷工場の中で職人が培ってきた特別な技篇は役目を終えたその時点で伝承されることなくやがて消えていきました。今回展示する京都市立芸術大学所蔵のおよそ100年前の、おもにタバコのラベル印刷に使用された石版の表面にも、その役目を終えた瞬間がそのまま固定化されており、現代のリトグラフの技法では使われていない技法をたくさん見つけることができます。

現在、石版印刷衝は美脩大学といくつかの版画工房の中で保存、継承されていますが、美術大学においては作品制作に適した技法を選び伝えているともいえます。私たちが学生として学んだ技法も教員として大学の授業で伝えていることも、選ばれたほんの一部にすぎず、歴史のなかで職人や技術者によって培われた膨大な技法はほとんどロストしている、と考えると眩畳を覚えてしまいます。

今回のStone Letter Project #6では Lost in Translation" というタイトルを掲げました。伝えるうちに欠落していく情報、伝えたくともうまく伝わらない、というところが直訳に近いところでしょう。これはLbHの活動のなかでいつもつきまとう問題であり、実感でした。リトグラフという技法の説明のし辛さ、明快に言えない表現としての特徴、リトグラフを語るときに感じるこの歯切れの悪さは何に由来するものなのか。この伝わらないことへの違和感があったからこそ、LbHは多くの作家や学生とコラポレーション やワークショップにおいても「すべてを知るもの」としてではなく「共に考えるもの」として行い、そこで得たことを不完全であっても次に伝えることを運動のように重ねてきたのだと思います。このStone Letter Project #6でも Lost in Translation’' を自覚しながら、石版に初めて触れる方々の驚きや感想を共有し、なお伝えることを懸命に行う展覧会を目指します。

[関連イベント]
1. ワークショップ 「かけらのリトグラフゾルンホーフェン産の石で」
講師: 衣川秦典(美術家 / 石版画家)
日時: 5月7日(日)、13日(土)10:30〜16:00
定員: 10名(要予約)
参加費: 3500円(材料費込み)
2. ワークショップ 「100年前の石版を刷ろう」
日時: 5月6日(土)、7日(日)、13日(土)、14日(日)13:00~16:00
参加費: 無料、予約不要
※イベント詳細・お申し込み方法は公式ホームページよりご確認ください。

スケジュール

2023年5月6日(土)〜2023年5月16日(火)

開館情報

時間
12:1518:00
入場料無料
会場名古屋芸術大学 アート&デザインセンター
http://www.nua.ac.jp/
住所〒481-0038 愛知県北名古屋市徳重西沼65 名古屋芸術大学 西キャンパス
アクセス名鉄犬山線徳重名古屋芸大駅西口より徒歩15分
電話番号0568-24-0325
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