SHINSAKU DW 「TRAIL BRAKING」

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アーティスト

SHINSAKU DW

OFS GALLERYでは2025年1月9日〈木〉ー2月10日〈月〉、北海道を拠点とする現代美術家、SHINSAKU DWの個展「TRAIL BRAKING」を開催します。SHINSAKU DWがOFS GALLERYで個展を開催するのは、2023年の「404 NOT FOUND」以来、約1年8ヵ月ぶり、2回目となります。

板状のアルミニウムの上に銀色のペイントを使って描いた2つの抽象絵画を裁断し、それを互い違いに入れ替えて並べ直して新たな2つの作品を生み出すという制作スタイルを長く続けてきたSHINSAKU DW。今回は、キャリア初期に彼が多く手がけていた、シェイプト・キャンバスの考え方に立ち返って制作した、菱形の作品などを展示します。

「前回の展覧会では、恩師である画家、花田和治の作品の考察も含め、これまでに自分が影響を受けてきたことなどを振り返り、改めて熟考するきっかけを与えられたように思います」と話すSHINSAKU DW。実際、「404 NOT FOUND」では北海道を代表する抽象画家として活躍した花田の画集も販売しました。

本展のタイトルの“トレイルブレーキング”とは、「コーナーに差し掛かりながら徐々にブレーキを緩めていく、コーナリングのテクニック」のこと。ただ、タイトルにした理由はブレーキとは関係なく、(英語の綴りこそ “BRAKING”と “BREAKING”とで違うものの)「自分が通ってきた痕跡(トレイル)を壊して(ブレーキング)、再び違うところを進まなければいけないのだ」とSHINSAKU DWが思い当たったことにあります。敢えてBRAKINGの方を採用したのは、作家がトヨタのワンメイクレースに参加するドライバーでもあるからです。

SHINSAKU DWはまた、家業を継いだ小麦農家でもあります。育てているのは北海道産小麦の主力品種のひとつ「きたほなみ」。収穫量が多く、耐病性にも優れているこの品種は、どちらかというと手間がかからず育てやすいそう。「親父が体をこわしてやらざるを得なくなったのが農業。だから効率作業して、効率よく収穫したい。小麦栽培って実際に畑に出て作業する日は1年で30日ほどなんです。麦は放っておいても伸びてくれる。コントロールできるところはやるけれど、後は天に任せるだけです」。

全く違う活動のように見えて、作品制作、カーレース、農業の3つには共通するところもあるようです。「僕にはどうも同じものを2つ用意しないと気が済まないというところがあります。作品も組で作っていますが、レース用の車も同じ車種を2台用意したい。畑仕事も同じで、畝を延々作っていきます。繰り返しという意味では、レースも同じ場所をぐるぐる回っている。でも、作品では再現性のない部分も作りたいと常に考えているんです。秩序を生み出すこと、秩序を繰り返すこと、そして秩序からはみ出すこと。そこにこそ新たな創造があると感じているのかもしれません」とSHINSAKU DW。秩序とは高度な技術のことでもあり、そこからはみ出すこととは人為性を意図的に加えることでもあります。「技術のないものや、偶然の要素が強いものを評価する気にならない」という彼のものの見方は、翻って自分のすべての活動にも反映されているのです。

本展ではそんなSHINSAKU DWの3つの活動を象徴するシーンを、北海道在住の写真家・安永ケンタウロスとのコラボレーションで写真作品化したものも展示します。北の大地に生い茂る麦、アルミニウムの素材、レースコースのカーブ。作品の背景も合わせてお楽しみいただければ幸いです。