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[画像: Enrico Isamu Oyama 《FFIGURATI #406 - The Grape Eaters》2022年、acrylic on printed image, 23.3 x 15.8 cm, each / a set of 23. Artwork ©Enrico Isamu Oyama, Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art]

大山エンリコイサム 「Epiphany」

Takuro Someya Contemporary Art
終了しました

アーティスト

大山エンリコイサム
Takuro Someya Contemporary Artでは、4年ぶりとなる大山エンリコイサムの個展「Epiphany」を開催いたします。大山は1983年に生まれ、現在はニューヨークと出身地である東京を拠点に美術家として制作を行うほか、エアロゾル・ライティング文化を体系的に論じた主著『アゲインスト・リテラシー―グラフィティ文化論』(2015年、LIXIL出版)などの執筆でも知られています。

大山の代名詞は「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」と名付けられたモティーフであり、これはストリートアーティストが名前の造形を通して自身のアイデンティティを示すときのレター(字形)から文字を取り除くことで線の運動にまで解体し、それを抽象的なかたちに再構成した作家独自の概念です。大山にとってQTSは「世界と関わるための手段」であり、かかれる「場」あるいはそれを取り巻く諸条件との相互作用から生成されます。大山は店舗内外の壁面にQTSをかいたJINS原宿店などのコミッションワークも手掛けていますが、立体的なモノトーンの形体がスクラップアンドビルドをくりかえす都市に呼応するさまは、モティーフがそれ自体の生を拡張していくかのようです。

本展「Epiphany」では、大山が2012年の渡米後まもなくして制作を始めた「Found Object」シリーズの23点組最新作を中心に展示します。「epiphany」はキリスト教の語彙として「啓示」を意味するほか、日常的には「ひらめき」や「気づき」と訳されます。最新作のベースは、ムリーリョ、シャルダン、ジョットといった⻄洋美術史上の芸術家の作品イメージが刷られた版画で、英国オックスフォードの古道具屋で手にしたそれらに、大山は、みずからのQTSを差し込むことで対話を試みています。

通常のエアロゾル・ライティングが支持体となる場の文脈や構成を無視してかかれるのに対し、本シリーズの特徴は、もとのイメージの構成に応答するようにQTSが描画されていることです。17世紀スペインの画家ムリーリョの絵画《葡萄とメロンを食べる少年たち》*(版画上の表記名は《The Grape Eaters》)を用いた作品では、QTSが閃光のように右上から左下に駆け抜けることで、ふたりの少年のあいだに交わされる視線、表情、しなやかな身体を強調し、画面に生き生きとした動きを与えています。「Found Object」という呼称やその手法は、シュルレアリストやダダイストの「ファウンド・オブジェ」や、マルセル・デュシャンの「レディ・メイド」を連想させますが、デュシャンが日常的なオブジェを異なる文脈でまったく別の物として提示したのに対し、大山の制作は、見出した対象それ自体に備わった性質を引出し、活性化する点で、別のアプローチだと言えるでしょう。

本シリーズはまた、刷られたイメージだけでなく、印刷物というオブジェクトに対する時間的な介在でもあります。《葡萄とメロンを食べる少年たち》は17世紀にスペインで制作されましたが、本シリーズに用いられたのは、19世紀の英国でそのイメージを印刷した版画です。イメージの有名性に比して、オブジェクトそのものは「美術史上の絵画作品を複製した無名の印刷物」にすぎません。大山の仕事は、こうした埋没したオブジェクトに光を当て、現代美術というアクティブな産業構造のなかで新たな美学的、経済的価値をもたらそうとしています。

さらに大山は、本シリーズ、とりわけ本展で発表される最新作において、QTSの介在を「過去のモーメントとの共振」と表現しています。この「モーメント」とは、これらの絵画が生み出された際に、画家が芸術的な「啓示(epiphany)」を授かった瞬間を指しており、大山はQTSによる働きかけによって時間を縦断し、そうした芸術史上に点在する創造の起点へと、想像的にアクセスすることを試みています。その結果、大山の「啓示(epiphany)」の所産であるQTSと、歴史的な絵画のイメージが相互に作用し、その鋭くも有機的なリズムは、作家の手を離れてもなお形而上的な運動を続けるかのようです。

私たちは、これらの作品からどのような「epiphany」を受け取ることができるでしょうか。大山エンリコイサムの代表的な作品シリーズを、深化したコンセプトのもとで紹介する本展にぜひご期待ください。

スケジュール

2022年10月15日(土)〜2022年11月12日(土)

開館情報

時間
11:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://tsca.jp/ja/exhibition/enrico-isamu-oyama-epiphany-2/
会場Takuro Someya Contemporary Art
http://tsca.jp/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F, 5F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩9分、東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩10分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩4分
電話番号03-6804-3018
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